三人の労働者がビルの建築現場で働いていると、通行人が近づいてきました。
最初の労働者は汚れて汗まみれで、仏頂面をしていました。
通行人が「あなたは何をしているのですか」と尋ねると、労働者は「レンガを積んでいるんでさぁ」と答えました。
二番目の労働者も汚れて汗まみれで、同じように仏頂面をしていました。
通行人が「何をしているのですか」と尋ねると、二番目の労働者は「時給2ドルで働いているんでさぁ」と答えました。
三番目の労働者も、やはり汚れて汗まみれでしたが、希望に燃えたいきいきした表情をしていました。一生懸命働いている点は他の二人と同じなのに、この人は仕事をらくらくと片付けているように見えました。
通行人は三番目の労働者に「何をしているのですか」と尋ねました。
すると彼は「大聖堂を建てているんでさぁ」と答えました。
先日、とあるミドル・マネジメント向けのセミナーに出てみたときに、
資料の中で紹介されていたお話です。
ビジネス関係のものだと分かれば、この話からどんなことを「教訓」として提示したいのかは
もはやどなたにも明らかであろうと思いますけれど、
個人的にはいろいろな読み方できるなとは思ったものです。
どちらも同じ本から持ってきたものと知って、
その本を読んでみることにしました。
それが、この「ザ・ビジョン」というものです。
読んでみるまでは、先のセミナーで引用されたような「ビジネス小噺(?)」めいたものを集めたものなのかな…と思っていたのですけれど、驚くほどに予想外の展開。
全編が、いわゆる一つの小説仕立てになっているのでありました。
もちろん、「小説になっています」と言っては小説に申し訳のないものではありますが、
個人的には「○○するには、××しなさい」といったハウツー本の類いが好きでない方ですので、
両者の中間くらいで助かったというところでしょうか。
ただ、主人公のエリーはできすぎですねえ。
ありえないと思いますよ、これほどの展開は。
それはともかく、原題の「Full steam ahead!」とは、南北戦争時代の南軍将校が軍艦(蒸気船)を操り、
「この先にどれほどの機雷があろうとも、全速前進!!」と言った、その「全速前進」のことだとか。
一見、無謀な突進とも思われますが、
ここでは、「全速前進」はやみくもに行うのではなく、ビションを持って臨むべし!ということなわけです。
そして、「説得力あるビジョンを生み出すための三つの基本要素」として、
- 有意義な目的
- 明確な価値観
- 未来のイメージ
を挙げているわけですが、これはビジネスの世界でなくても通用することが語られています。
読んでみると、(日本で言う所の)PTAみたいな会合では「学校のビジョン」作りに、
そして壊れかけた家族の絆を修復するための「家族のビジョン」作りに役立つ様が例示されています。
「なるほど!」とは思うのですけれど、そうそううまく行かないだろうなあ…
それでも、仕事のところでは応用してみたくなってしまうような面白さを湛えたこの本。
笑いとばすことはできないかもしれないですねえ。自分を振り返れば、なおのことです。
最後に本書にも引用されていた、ゲーテの言葉を。
こういう言葉はともすると「鼻白む」といった表現がぴったりきてしまうようなところもありますが、
ここはひとつ、前向きに…
自分にはできる、あるいはできるようになりたいと思ったら、ともかく始めること。大胆さが才能を生み、力を生み、魔法を生む。 - ゲーテ
