先にフォーレ のことに触れましたけれど、

フォーレの音楽そのもののことはほとんど言及していないことに気が付きました。

音楽家の話なのに、あらら!ですね。


管弦楽作品の数に比して、室内楽曲、ピアノ曲、歌曲の作品が多いフォーレ。

その中で、ピアノ曲に注目してみることにしようと思ったのですが、

その訳はといいますと・・・。


ピアノ作品のタイトルには、曲の種類というのでしょうか、性格というのでしょうか、

「前奏曲」、「練習曲」、「夜想曲」、「即興曲」などといった名称とともに作品番号が付されますけれど、

フォーレのピアノ曲の中で、13曲の夜想曲と同じく、作品数では一番多い13の作品を残したのが

「舟歌」というものなのですね。


「舟歌」と聞いただけで(ここで多くの方が想像する期待を裏切らないこと言いますが)、

八代亜紀の歌声とともに、日本海沿いの小さな漁師町の路地裏にぽつんと灯った赤ちょうちんを

思い浮かべてしまうのは、日本人ならではかもしれません。(ほんとはこちらは「舟唄」ですが…)


そこで、「舟歌」とは何ぞやというところから入りますが、

本来の名称はバルカロールで、ゴンドリエの舟漕ぎ歌ということが元祖のようですけれど、

クラシック音楽では、6/8拍子、9/8拍子、12/8拍子というリズムのもと、

波の揺れるような、また波間にたゆたうような伴奏形を持つというのが特徴のようです。

まさに、「舟歌」ですね。


これが「ホフマンの舟歌」のようなタイトルになっていれば、演歌っぽさはみじんもないのですが、

いきなり「舟歌」だけだと、どうも・・・。


ところで、この「舟歌」というタイトルが付けられた曲は、いろいろな作曲家が作っているようですけれど、

ピアノの膨大な作品を残したショパン には、たった1曲だけ。

それに比べて、フォーレは13曲。

しかも、1880年頃の作とされる第1番作品26に始まり、最後の第13番作品116は1921年の作ということで、

生涯にわたってコツコツと書き続けたのですから、フォーレこだわりの形式ということになりましょう。


ですから、13曲の「舟歌」というと何かしらまとまりあるような作品集のような気がしてしまいますが、

キラキラと水面に眩い光が反射するようなロマンティシズムに溢れた初期作品から

だんだんと重厚なものが現れて「舟が大きくなったかな」と思わせるものや

若々しいパッセージよりもむしろ響きの妙で迫る(少しばかり、ドビュッシー を思わせたりする)ものなどが出てくるわけでして、作曲家の円熟していく過程が聴けるものともなっているようなのですね。

フォーレ:ピアノ作品全集(2)/ジャン・ユボー
もっとも、個人的には第1番、第2番といった初期作品の眩さに、

旅情を掻き立てられる想いがしますけれど、

お好みは人それぞれ、さて何番目あたりに心奪われるでしょうか。


ジャン・フィリップ・コラールの演奏で聴きましたが、

どうやら廃盤のようですので、ジャン・ユボー盤ではいかがでしょうか。