先週のTV東京「美の巨人たち」では、
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナーが取り上げられていました。
もともと好きなタイプ(?)でもありますので、早速にターナー探究をしてみることに。
これが番組で紹介されていた作品「雨、蒸気、速度 グレート・ウェスタン鉄道」(1844年以前)です。
何よりタイトルの付け方が凄いですね。
雨とかグレート・ウェスタン鉄道とかいうのは分かるにしても、蒸気や速度を持ちだすあたりは
なんだか生きる時代を間違えてるんではなかろうかという気も。
ターナーは、1775年に生まれ、1851年に亡くなりました。
隣国フランスで、絵画の世界に大きな変革が起こり、
ぐぐっと多様性を開花させる以前の人と言ってよいのではないかと思います。
例えば、ターナーと同時代の風景画家ジョン・コンスタブル(1776-1837)の晩年の絵を見てみます。
1830年の「教会の耕地」という作品、いかにもと言った風景画ですよね。
これと同じ時代に、ターナーは「蒸気」を、そして「速度」を描き出そうしたのですよ。
とはいえ、ターナーも初めからこうであったはずはないのでして、
これは、「カルタゴを建設するディド」(1815年以前)という作品ですけれど、
もう見るからに、クロード・ロラン していることが見てとれるものと思います。
ターナー自身からして、クロード・ロランの絵の隣に展示することを条件にして、
ロンドンのナショナル・ギャラリーにこの絵を寄贈したのだそうですよ。
そしてターナーは、このようなクロード・ロランの光を描く追求から、
だんだんと光を含む空気そのものを描くことにたどりついたのだと思われます。
すでに1816年段階からして、批評家ハズリットは「今生きている中で最も才能ある風景画家」としながらも、
作品に関してはこんなことを言っています。
あまりにも抽象的な空気遠近法が用いられ、自然の事物がそのまわりの空気ほど適切に描きだされていない。
こうしたことから、ハズリットはターナーを「四大元素の画家」と呼んだとのことですけれど、
四大元素 とは地風水火で、風は空気でもあるわけですが、ハズリットの言には揶揄が含まれていたにせよ、
実はターナーの本質を言い当てていたのかもしれません。
というわけで、ターナーの油彩画はこの空気感からして印象派をイメージさせる世界を、
それに先駆けて残したわけですけれど、気づいてみれば水彩画の作品も相当に残しているようです。
そして、この水彩画がまた、観る者の想像力を刺激する作品群だということに
遅まきながら気付かされた次第です。
最後に、「日の出、岬の間をゆく小船」(1835-40年頃)です。
クロード・モネの「印象・日の出」に先立つことは30年あまり。
キャンバスが発する空気を共有する。
それが、唯一最高の鑑賞法なのかもしれないですね。
まさにその名(Turner)のとおりに絵画の世界を転回させた人、
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー。
油彩画の多くは、ロンドンのナショナル・ギャラリー、テート・ギャラリーで、
そして水彩画は大英博物館で、ぜひとも実物に触れたい画家ではないでしょうか。



