企業が絵画コレクションを所蔵しているというケースはままあることですが、残念なのはなかなか見る機会が得られないということ。
それだけに、夏にホテル・オークラで開催される「秘蔵の名品アートコレクション」展 のような企画は、
「おお、こんな絵もあったんですなあ」
という楽しみの素になるわけです。
一方で、企業(というより、オーナー社長だったり、
その一族だったり)が集めた作品を入れる器=美術館まで作ってしまうケースもありますよね。
千葉県の川村記念美術館 だったり、
福島県の諸橋近代美術館 だったり。
京都の大山崎山荘美術館 は、ちと違うか…
とまあ前置きが長くなりましたけれど、
そんな企業コレクションを持つ会社として商社の丸紅があり、
その創業150周年を記念して、今回はその秘蔵の?コレクション展が開催されたというわけです。
当然のように、展示の冒頭では丸紅の歴史に触れる部分が出てくるのですけれど、
「創業者は・・・なになに・・・近江商人の伊藤忠兵衛…という人かぁ…え?!伊藤忠??」
いやいや、この伊藤忠兵衛という人、今の丸紅も伊藤忠商事も、どっちにとっても創業者のようです。これはこれで、へえ~!なのでした。
ところで、展示の方はといえば、もともと繊維、織物の卸をやっていたこともあって、
着物の展示に始まり、続いて衣裳図案の下絵へと進みます。
衣装の下絵だからと言って、作家としては手を抜くわけではなく、
当然のように個性が展開しているのですね。例えば、これ。
藤島武二の「蝶」という作品(1932年)です。
非常に自由な線描は、むしろ西洋画のようではないでしょうか。
そして、いよいよ絵画作品の登場です。
岡田三郎助の「沼のほとり」(1919年)は、
まさに日本の洋画がバルビゾン派から印象派に至る流れを後追いしているかのようですし、
荻須高徳の「パリ郊外」(1933年頃)は、ヴラマンク とユトリロを足して二で割ったよう。
日本の洋画受容史をたどるようです。
そこに登場するのが、梅原龍三郎の「桜島」(1937年)なのですね。
とかく日本の風物というものは、油絵には似合わないよなあと思うわけですけれど、
この梅原の大胆さには頭が下がってしまいます。
決して厚塗りの圧倒感というものではないのですけどねえ。
そして、この小磯良平 の「バレリーナ」(制作年不詳)はキュビスム風に瞬間を切り取った感じは、
絵の中からバレリーナが浮き立つ力が感じられるものなのでした。
日本の作家では、他にも香月泰男の「ラス・パルマス」(1973年)に見る思わぬ滑稽さ、
難波田龍起の「海の詩」(1966年頃)での、色の重なりがずれた層による美しさなど
見るべきものがありました。
一方、海外作家のものでも、デュフィ やヴラマンク、キスリング やユトリロ、ビュフェ など
やっぱり本物を見ると、タッチの妙が面白いよなあと思えるものがあれこれ。
なかでも、ちと気になったのがエミール・ノルデの「森の空き地」(1910年)なのですね。
強烈で深みのある色彩が特徴と言われるノルデですけれど、
同じく強烈な色彩とはいえ、フォーヴのヴラマンクとはまた違い、
かさかさと乾いた画面が非常に個性的なのでありました。
ドイツ表現主義とも言われますが、表現主義といってムンク にピンと来てなかったものが、
通じるような気配を感じたのでした。
ということで、ひとりの画家の回顧展のような、
あるいは何かしらのトピックによって集められた展覧会のようなまとまりは欠いていたかもしれませんが、
想像以上に楽しめるものであったように思われます。
これらが、普段どこそこへ行けば見られるというものでないだけに、
出向いた甲斐があったというものでしょうか。


