このところ少しばかりラヴェルを気にしていた 関係で、CDをあれこれ取り出してみたりしておりましたが、

ボレロよりさらに最晩年の作と知って聴いてみたのが、協奏曲です。


最晩年の作品といっておきながら、曲名でなくして「協奏曲」というカテゴリーで言っているのは、

ラヴェルには協奏曲が2曲しかなく、それがいずれもピアノのためのもので、

さらには、この2曲が相次いで書かれた双子のような作品だからなのですね。


先にできたのが、「左手のためのピアノ協奏曲」。
文字どおり左手だけのピアニストであるパウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱で書かれたもの。

さすがにこの人も、最初から左手だけだったわけでなく、

右手は第一次世界大戦で失ってしまったのだそうです。

ちなみに、この人はあの哲学者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインのお兄さんだそうですよ。


想像を働かせてしまうのは、まずこの曲の冒頭部分です。

ただならぬ低音(コントラファゴットだそうで)がうごめく形で始まりますが、

ぼんやり聴いてしまうと、曲の開始というよりも

オーケストラのリハーサルが始まったのかと思ってしまいます。


そんな重く引き摺るようなメロディ・ラインがひとたびトゥッティで出てくると、

実に華やかな雰囲気を醸すのですから、マジックのようですよね。


華やかなと言いましたけれど、

ピアノ・ソロも本来低音部を主に担っている左手だけであるにもかかわらず、

大変な技巧を聴かせてくれます。

弾けない人間には、これが片手か!と。

楽譜を見てさえ、片手で弾くようすを想像できないのですから。


この曲をヴィトゲンシュタインがあまりに華美に弾いたせいで、

(たぶん、「のだめ」じゃないですけど、余計な音も入っていたようで)

ラヴェル先生は、ここでもお怒りだったとか。

もっとも、ラヴェル本人は両手で弾いていたらしい・・・


そして、ラヴェルの2曲目にして、最後の協奏曲が「ピアノ協奏曲ト長調」です。

明るく楽しげな第一楽章、優しく静かな第二楽章を経て、

ここでの想像力の働かせどころは第三楽章ではないかと。


ジャズっぽいと感じる人も多いでしょうし、解説にも必ずそのように書いてありますけれど、

ここで思い浮かぶのは「ゴジラのテーマだ!!」ということ。

音型から言ってピンとくる人はおそらく昔からいたとは思いますが、

さすがにそういう解説は一般的にはされていないようで。

こうなると、伊福部音楽がラヴェルを圧倒してしまうというインパクトで迫ってきます。


まあ、想像というのは人それぞれですけどね。

そうそう、ラヴェルはこのピアノ協奏曲を自分の独奏で初演するつもりだったようですけれど、

あんまりピアノが上手な人ではなかったらしく、願いは叶わなかったのでありました。


ラヴェル&ドビュッシー管弦楽作品全集/ジャン・マルティノン