フィリップ・グラスが映画「めぐりあう時間たち」 につけた音楽は、

とても素晴らしいものでしたけれど、

グラスの音楽はそればかりではないでしょうから、

少々怖いもの見たさ(?)で二つの作品を試してみました。

交響曲と歌曲です。


交響曲といっても、ハイドンからベートーヴェンに至る構成のかっちりした

「音楽の真っ向勝負!」といったものからだんだんと離れていった結果、

かなり自由に「シンフォニー」という言葉を作品に使うようになった果てにあるものですね。


タイトルを「“Low”Symphony」と言いまして、

グラスにとっては交響曲第1番ということになります。

なんでも1970年代にブライアン・イーノとデヴィッド・ボウイが発表したアルバム「Low」を

シンフォニーに仕立てた1992年の作品なのですね。


イーノとボウイのオリジナル曲は聴いたことがないので、貶めるつもりも毛頭ありませんが、

どうしてもBGM的に聴いてしまうわけです。

ベートーヴェンのシンフォニーを聴くときに「ソナタ形式を読解する」みたいなところもありませんから、ついつい聴き流してしまったりします。


とかく、ミニマル系の音楽を集中して聴きとおすのは、

それはそれで精神の強靭さ(大げさですが)がいるかなと。


と、安易にミニマルと言ってしまいましたけれど、

自分の心覚えのためにも「ミニマル・ミュージック」の意味合いを

はっきりさせておきましょう。Wikiからの引用です。


音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽。
あくまで単純な反復のリズムがメインであり、曲として成り立つ最低限度に近いほど、展開も少ない。しかしそれらの中での微細な変化を聞き取るのが目的であり、全体的な視点から見れば決して無駄な反復ではなく、音楽は徐々に展開していると言える。

ソングス・フロム・リキッド・デイズ/フィリップ・グラス
ここで、歌曲集の方に移りますけれど、

こちらは「Songs from liquid days」というものです。

すぐに思ったのは、ミニマルは場合によると、

実に伴奏にぴったりするということなのですね。


あたかも、グノーが大バッハの「平均律クラヴィーア曲集」の第1曲「前奏曲」に乗せて、

新たなメロディを紡いだような…といったらよいでしょうか。

ですから、グラスの本領がミニマル的な伴奏にあるとしたら、

メロディはかなり自由なことになってくるわけですが、

これがグラスらしいメロディなのか?!というよりは、

伴奏音形にこそ耳が行きがちなのは無理からぬことでしょうか。


もっとも、グラスにはオペラ作品もあれこれありますから、

その辺を賞味してからでないとはっきりとは言えませんけれど、

個人的な好き嫌いも加味して言ってしまうと、

「めぐりあう時間たち」を超えることはなかったなと思ってしまうのでありました。