ごろりとしながら、「ギャラリー・フェイク 」の第3巻(文庫版)を読んでいましたら、
こんなセリフが出てきたのですね。
キリコが古代の宮殿にマネキンのような人物を配したシュールな画風を確立したのは、20代のころのことだわ!
というより、キリコの名声を高めた代表作のほとんどは、この時代に描かれているの。
ところが、31歳の時、ローマの美術館でルネサンスの巨匠ティツィアーノの作品に感銘を受け、自然と伝統への回帰を決意する!
その時から20代の代表作をいっさい否定し、時には贋作呼ばわりしてまで自分との関係を断ち切ろうとしたわ。
えっ?!キリコって、あのジョルジョ・デ・キリコが?自然と伝統に回帰・・・。
これはニューヨークのMOMAにある「二人組」という作品ですけれど、
1915年作ですから、1888年生まれのキリコが20代の作品。
まさに、先ほど引用したセリフにあるとおりのマネキンが登場しています。
そして、これこそキリコと思う方が多いのではないでしょうかね。
こうでないキリコの絵というのが、あまりイメージできなかったものですから、
近くの図書館で画集を見てみることにしました。
「なるほどねえ、これが古典に回帰したという作品かぁ」というものを見ることができました。
が、この古典風な作品というのは、ほとんどが個人蔵となっていて、
美術館のHPから画像を拾ってきたりすることができなので、
気になる方は図書館や書店で画集をご覧になってみてください。
でも、31歳でティツィアーノに刺激を受けた後の作品が、
みな古典風かと言いますとさにあらず。
やっぱりいくつになってもマネキンは出てくるんですね。
つまり、古典への意識を強くもってそれ風のものも描けば、
そうでないものも描くということで、
古典にどっぷり浸ったわけではなくって、行ったり来たりが可能な状態でしょうか。
たまたま手にした画集の解説では、
例えばストラヴィンスキーが先鋭的な「春の祭典」を作ったのち、
(今や、さほど先鋭でもないですが・・・)
ペルゴレージを範にした「プルチネルラ」を作ったようなことに擬えていました。
プロコフィエフが古典交響曲を書いたり、
音楽の世界では時折先祖返り的なケースが見受けられますが、
(一様に、シンプルな古典礼賛とは言えないでしょうけれど)
キリコのケースが美術の世界の一例と言ってよいのですかね。
返す返すも、画像を示せないのがまどろっこしいですが・・・。
