二泊三日は早いもので、すぐに三日目で最終日(9月15日)。

神戸を回って、帰途につこうというわけですけれど、やっぱり目指すは美術館です。


梅田から阪神電車に乗って、向かったのは三ノ宮…でなくって、岩屋という駅なのですね。

地味ぃな私鉄の駅ですが、ここから海の方へ向かうと、

震災後の再開発なのでしょう、立派な建物がたくさん建っておりまして、

その中に兵庫県立美術館があるわけです。

そこで開催中だったのが、「シャガール」展なのでした。


シャガール展

この日は「敬老の日」だったので、県内65歳以上の方(だったかな)は無料入場できるとあって、

なかなか混んでいたのですね。

開館と同時に入場したのですけれど、どうしても最初のところで滞り気味になってしまいますから、

ここはぐぐっと最初の「初期絵画」のコーナーを飛ばして、たくさんの版画作品も飛ばして、

まだほとんど人のたどりついていない「中期・晩期絵画」のコーナーを堪能させてもらいました。


シャガールの絵というのは、なんだか幸せな気分にしてくれますよね。

赤!青!黄!これほどはっきりした色使いなのに、色彩が全くうるさくなっていません。


マルク・シャガール「赤いサーカス」

例えば、この「赤いサーカス」(1956-1960年)などは、率直に言って「真っ赤っか」ですよね。

それでも、少しもうるさくない。

へばりつく男女、ロバ、そして花束…

描かれたモティーフも毎度繰り返されるものなのですよねえ。

それでも、なんだかいい気分!

取り分け、この絵は浮き出るタッチが珍しく、そうした点でも楽しめるものなのです。


趣きの異なるところでは、「放蕩息子」(1975-76年)。

いろいろな画家が題材としている「放蕩息子の帰還」は、例えばレンブラントなどもそうですが、

わりとひっそりと「よくまあ、帰ってきた!」と内輪で喜ぶ印象があります。

ところが、シャガールの場合は、村じゅう総出で歓待しているようす。

シャガール自身が故郷のヴィテブスクに帰ったかのようです。


というところで、初期作品に戻ってみると、やはり目につくのが「街の上で」(1914年)です。


マルク・シャガール「街の上で」

晩年のタッチと明らかに違いますし、人物やら背景やら何となくピカソを思いださせますが、

(もっともキュビスム風の作品はほかにありますけれど)

そうではあっても、このように男女がへばりついて浮遊するのは

一貫して描き続けた題材なのですね。

夫婦は「一心同体」と思っていた、シャガールらしいところです。


こうした油彩作品の他に、たくさんの「版画集」が展示されていました。

以前、上野の森美術館でも「ダフニスとクロエ」などシャガールの連作版画を見ました けれど、

今回の展示はゴーゴリ の「死せる魂」や、「ラ・フォンテーヌの寓話」に寄せた連作版画。

これらは、ぜひとも話を読みながら、眺めたいものです。


とまあ、相当に充実した企画展ですけれど、ここの美術館の侮れないところは、

常設展もかなりしっかりしているところ。

(企画展のチケットを持っていても、また300円とられますけれど…)


小磯良平「斉唱」

小磯良平 の「斉唱」(1941年)など、なかなかに見るべきものがありまして、

ここはたっぷりゆっくり、一日掛けて見る価値のある美術館なのではないかと思った次第です。


小磯は神戸出身ですから、登場しても当然ですが、なまじ小磯作品を見てしまいますと、

阪神電車ちょっと大阪方向へ戻って、六甲ライナーに乗れば、

「小磯記念美術館にも行けるな」と思ったりしましたが、

やっぱり三ノ宮に出ておかないと、帰りが大変だと意を決して、

今回の旅で最後になる目的地、神戸市立博物館へと向かったのでありました。