上野の西洋美術館あたりなら、「常設展でも見に行こうかな」と思うこともありますが、

世の中、いろいろ趣向を凝らした「企画展」が花盛りだと、

なかなか常設展だけを見に行くことに手が回らないのですね。

そう考えると、いつでも見られると思っている常設展は実は一番見られないものなのかもしれません。


と、あたかも美術の話のように書き始めましたけれど、実は音楽の話。

中野にある、なかのZERO大ホールで行われた東京室内管弦楽団 の演奏会を聴いてきたのでした。


クラシック音楽の演奏会が選曲の妙を競って、いわば「企画展」にあたるものであるとすれば、

ファミリー・コンサートや名曲集のような、(言い方は悪いですけれど)手垢がついてしまったようなメロディを

多々演奏してくれる類いは、「常設展」のようなものかな・・・と思ったわけです。

聴く機会がありそうでいて、実はあんまり生で聴く機会が無いという・・・。


でもって、今回の演奏会はまさに、そんな名曲集。

メンデルスゾーンに始まって、ヴェルディ、ヘンデル、

プッチーニ、ドニゼッティ、モーツァルト、

チャイコフスキーとごった煮状態なのでした。

つまりは、中世のフレスコ画もあれば、

ダヴィッドやアングルもあり、クールベもモネもあるという、

所蔵品御開帳の「常設展」の趣きなわけです。


まあ、強いていえば、ヘンデルの「水上の音楽」を除けば

すべて舞台に関係のある音楽を集めた企画と

言えないこともないですけれど。


そうは言っても、それはそれで面白い内容ではありました。

メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲は、

まさにこれからシェイクスピアの芝居が始まるかのような

わくわく感がありますし、

ソプラノ、テノールを交えたオペラのアリア集も

聴き応えのあるものでした。


ここで思わぬ収穫(?)だったのは、

ソプラノのサイ・イエングアン(崔岩光)ですね。

「椿姫」のヴィオレッタや「ラ・ボエーム」のムゼッタなどで

ハッとさせられたものの、声は少々ガラっとした

いわばマリア・カラス的なところがあるわけでして、

これが、モーツァルトの「夜の女王のアリア」で、どかーん!とくるわけなのです。


また、ステージでの立ち居振る舞いがまた妙に落ち着き、余裕があって大家然としている。

これが嫌味にならないのですから、大したものだなと思うのでして、

コンサート形式でなく、本物のオペラの舞台を見せて欲しいと思わせてくれてしまうのですね。


思いつきで出かけたわりには、思いがけず(?)楽しませてもらった演奏会でありました。

そして、サイ・イエングアン にも少々注目してみたいなと思ったのでした。