細野不二彦「ギャラリーフェイク」 「ギャラリー・フェイク」という漫画があることを全く知りませんでした。

何ごとにつけ流行りものには弱い方ですので、

漫画も読むことは読みますけれど、

だいたい世評が定まった後に初めて知るというのがいつものことです。

「沈黙の艦隊」にしても、「モンスター」にしても、同様でした。


ところで、「ギャラリー・フェイク」です。

これは、どなたかのブログにお邪魔したときに紹介されていた

ものだったように思うのですね。

「画廊を舞台にした絵画に関係する話なんだろうな」

と思って、機会があったら読んでみるかと思いながら、

例によってそのままになっていました。


たまたま、またチャリ銭買いで手に入るのが見つかったので、

これを機会と思ったわけです。


のっけから申し訳のない言い方になりますが、作者の細野さんの絵がもう少し巧いとよいのですが・・・。

何しろ美術を扱ってらっしゃるのだし。


話はあれこれの美術にまつわるエピソードを膨らませて、

それぞれ面白いものに仕立てあがっているように思います。

そして、主人公が、元メトロポリタン美術館のキュレーターでありながら、

今は贋作ギャラリーの経営者として美術界のブラック・マーケットにも相当な顔ききという

翳もあり、斜のかかった人物というのも、面白い設定に思えます。


ただ、贋作取引といった「裏世界の住人」というレッテルが貼られているわりには

個々の物語での活躍というのは、正面切って「よくやった!」と言えるものではないにしても、

「もしもこの人の活躍なかりせば、世界的な遺産たる美術品はどうなっていたものか」と

それこそ感謝、感謝される存在なのですね。


そう考えてみると、手塚治虫の「ブラック・ジャック」にそっくりではないかと思いあたるわけです。

天才的な外科医でありながら、無免許医という立場から表沙汰に出来ないような治療依頼がひきもきらず、

相手の弱みに付け込んで、法外な治療費を吹っ掛けるものの、

ことの収まりには、必ず人間性溢れたものがあるという。


漫画作品としての仕上がり具合の点で、「ブラック・ジャック」に比肩しうるとまで言ったら、

褒めすぎですから、そうは言いませんが(細野さん、ごめんなさい)、

設定の妙という点では、似て非なる良い味を出しているようですね。