2004年度PEN境界文学賞ほかを受賞した、
韓国系女性アメリカ作家スキ・キムの処女作だということです。

通訳/インタープリター/スキ・キム

もちろん作者自身の自伝ではないにせよ、13歳まで韓国で育ち、
その後ニューヨークへ移住した「1.5世」
(大人として移住した一世でも、移住先で生まれた二世でもない)
の微妙な上にも微妙な作者の意識は、
まぎれもなく本作の主人公スージーに映し出されているのでしょう。

通訳といっても、韓国系移民と米国移民局の間にたって、
在留資格の適法性のような審問に立ち会う役回りであるからには、
完全に感情の移入を排除した、機械的な通訳などできようはずもないわけですね。

そんな仕事につきつつも、否ついているからこそ、五年前に自分の両親が射殺された殺人事件にも、
移民社会のあれこれを「鍵」として考えるし、
多少ご都合主義っぽくはありますが、当時の状況を知る人たちにめぐり合ったりするわけです。

ストーリーのメインは、この両親殺害の裏側を暴くことにあって、ミステリーの要素も帯びますけれど、
そこここに活写される移民の実情は、訪れたマンハッタンの摩天楼の根本で営む小さなデリの様子が
思い出されてくるのですね。

なんとかこぎれいに店を営むための苦労は、朝、ハンバーガーにコーヒーを買いに立ち寄ったところで、
夜に晩飯のおかずをパックに詰めて量り売りしてもらいに行ったところで、分からない。

これは別の本で読んだのですけれど、
値段が高いと売れない、かといって安いと従業員を安く使っているんじゃないかと組合にボイコットに合う
ということで、気の休まる暇もなく働きづめに働くのだと。
それでも、生まれた国にいるよりも良かったのだろうと。

本書が言わんとしているのは、そういうことではないのでしょうけれど、
あれこれ考えることが多くなるのですね。
自分は、地に足をつけて生きているでしょうか。
自分は、周りと違うんでしょうか、同じでしょうか。
違っていいんでしょうか、あるいは同じである必要があるのでしょうか。
そして、自分は、なにものでしょうか…