本橋成一「アレクセイと泉」 ベラルーシ共和国の、ロシアの国境まで目と鼻の先というところに、
ブジシチェという村があるそうです。
チェルノブイリの事故による汚染地区の間近、
ガイガーカウンターが大きな音をたてる地域を通り抜け、
その音がひと段落した辺りにある村なのだそうです。

この村の中央には、昔々から湧き出る泉がありますが、
何故だか全く放射能汚染されていないということなのですね。

汚染地域で定期的に放射能値を測定している保健局の方から、
写真家の本橋成一さんはこの村を紹介されたということで、
通ってみれば、これほどに自然と向き合って暮らす人たちの姿に思うところがあったのでしょう、
写真を撮り始めたわけです。

村の泉を、人々は「100年の泉」と呼んで、信仰の対象にしているといいます。
大地が培って、100年ごしの水を湧き出させてくれている。
だから、昨日今日の放射能汚染など関係ないのだと。

この写真集に写し出された村人たちの日常は、あたかも民話の世界から抜け出してきたかのよう。
都会の人間からはそのように見えても、
村からはどんどんと人が去っていって、老人ばかりと三十代のアレクセイがポツン残るだけになっています。

じわぁっと考えてしまう写真集なのですね、これが。
映画にもなっていますから、ぜひ一度見てみたいと思っているのですが・・・。