とある会合の中の講演会で、災害の際の情報伝達の話がありました。
講演の中では、事例として阪神淡路大震災や北海道南西沖地震、
中越地震などなどの状況に触れていたのですけれど、
ちょっと異彩を放っていたのが、「タイタニック号」沈没の事例でした。
映画もなって、もはや伝説みたいな感じになっているだけに、
他の事例に比べて印象に残りやすかったのでしょう、きっと。

タイタニック号が氷山にぶつかる前に、他の船などからの警報が7回、入ったのだそうです。
ところが、この情報がブリッジに伝えられたのは最初の2回だけなのだといいます。
何故でしょう??

翌日にはニューヨークに到着するというときで、乗客が出迎えその他の関係もあってか、
電報発信に忙殺されていたようです。
もちろん、だから警報を無視していいはずもないのですけれど、
冬の北大西洋では氷山が見えるのは日常的なこと(ぶつかるなどとは思っていないことを前提にしてますが)で、
それに「このタイタニックは沈まない船なのだから」という、
当時最大級の船に安心しきっていた心理も働いたかもしれません。
(今回の講演の話では、電報発信のことが触れられていましたけれど、後は憶測です・・・)

DVD「タイタニック」

 まあ、こういう話を聞いたものですから、DVDで「タイタニック」を見てみたわけです。
 以前見たときには、長いだけ長くて(3時間15分!)今ひとつだなと
 思っていたんですけれど、
 不思議なことに、しっかりと「見ようとする意識(?)」を持ってみると、
 なかなか面白いんではないかなと。

 例えば、こんな会話がありました。

   「この船は、どこの船だ?」
   「アイルランドだよ」
   「いや、イギリスに決まってるだろ」
   「15,000人のアイルランド人が作ったんだ!」
そういえば、豪華な豪華な一等キャビンの下の下、乗船の際に衛生検査が求められるような三等客室の
(ポーカーで三等のキップをせしめたディカプリオも「虱はいないから、乗せてくれ」と叫んでました)
さらに下の機関室で汗まみれになりながら、石炭をくべていた人たちもアイリッシュなのではと想像するのでした。
そう考えてくると、ジェームズ・ホーナーが書いたスコアに漂うケルティックな雰囲気というのも、
妙に感慨深く思われてくるわけです。

ところで、映画の中では「氷山接近」の連絡がブリッジに伝えられるシーンが一度だけ出てきます。
ここでは、「この時期、このあたりには、よくあること。せいぜい気をつけておこう」くらいの反応でした。
また、無線室も一度だけ登場しますが、事実に比べてずいぶんのんびりした様子のところへ
「SOS」発信を求められて、慌てるといったふうになっています。
ま、映画は必ずしも事実ばかりを描くことを目的にしていませんし、
映画のメイン・ストーリー自体が事実ではないのでしょうから、それをとやかく言うつもりはありません。
むしろ、タイタニックの悲劇からのインスパイアド・ストーリーとしては上手く作ったなと、改めて思ったのでした。

とまあ、映画は映画として、先の講師はタイタニックに悲劇の陰には
「情報のグレシャムの法則」(講師の造語らしい)が働いていたと言います。
「悪貨は良貨を駆逐する」という、経済学の法則は情報伝達にも通ずるものがあるということなのですね。
瑣末な情報が、重要な情報の伝達を妨げてしまうということでしょう。

また「経験の順機能・逆機能」ということも言っておりました。
経験済みだからと類似のことを軽く見てしまったり、経験したことがないから過度に大袈裟に考えてしまったり。
「この時期、このあたりには、氷山はよくある」から、軽く見てしまうようなことなわけですね。

話はもっぱら、災害時のことだったわけですけれど、
「グレシャムの法則」も「経験の順機能・逆機能」もかなり日常的、普遍的に応用可能な考え方だなと
思ったのでありました。