ウクライナ民話「びんぼうこびと」
 近くの図書館で「も一つくらいウクライナ民話を」と探してみたら、
 何冊かあったのですけれど、
 絵本はやっぱり絵が大事です。
 結局、外国の画家の絵が付いている本は絵が気に入らなくて、
 日本人画家が絵をつけた「びんぼうこびと」というお話を借りてきました。
 (もしかして借りなかったものがウクライナ人の画家だったら、
 本当はそっちの方がリアルだったかも・・・)

 今度のお話は、いわゆる貧乏神のお話でした。

ある村のお百姓はとっても働き者で、朝から晩までせっせと働き続けているのに、どういうわけか村一番の貧乏だったのです。
そんなお百姓でしたが、ある日曜日に珍しくごちそうを手に入れることが出来ました。
村でも評判のバイオリン弾きだったお百姓は、うれしくなってバイオリンを弾き始め、こどもたちもおかみさんも曲にあわせて踊り出しました。
すると、部屋の隅のほうで、小さな小さなやせっぽちのこびとたちも踊っているではありませんか。
それが「びんぼうこびと」だと分かったお百姓は、こびとたちを捕まえて村はずれの水車小屋に閉じ込めてしまいました。
それ以来、お百姓の暮らしはみるみる良くなっていきましたが、おもしろくないのは隣に住んでいた村一番のお金持ちです。
ひどいやきもちやきでしたので、どうしてお百姓が急にお金持ちになったのか、わけを尋ねにやってきました。
お百姓から、「びんぼうこびと」の話を聞きだすと、すぐにお百姓の家へ戻れと命令します。
ところが、追い出して水車小屋に閉じ込めるようなお百姓の家などに戻りたくないこびとたちは、「助けてくれたあなたの家に行きたい」と言い出しました・・・


 結末はもうお分かりですね。
 「びんぼうこびと」は、村一番の金持ちにへばりついたまま離れず、
 それからというもの、お金持ちはどんどん貧乏になって、
 とうとう一文無しになってしまったとさ。

 まじめな人が、結局は強欲の人より良いんですよといった教訓めいた含みもありますし、
 あんまり欲をかくとばちが当たりますよという話でもあるのでしょう。
 でも、びんぼうこびとにとっては、本来良い人らしいお百姓が、自分たちを追い出した「悪い人」であって、
 やきもちやきで強欲なお金持ちが、自分たちを助けてくれた「良い人」だという
 ちぐはぐさが面白いのかもしれません。

 本筋からは少々離れますが、注目すべきはお百姓がバイオリン弾きだということです。
 ウクライナでバイオリン弾きと言われますと、どうしたって「屋根の上のヴァイオリン弾き」です。
 そして、ユダヤ人です。

 黒海沿岸のウクライナからロシアにかけて、
 東方教会の影響を受けたロシア正教が信奉されているわけですけれど、
 このロシア正教の典礼では
 (教会につきものと思われるオルガンも含め)いっさい楽器が使われないのだそうです。
 人の声だけが音楽を奏でる要素のようで、ロシアの合唱が有名なのはこの辺にも起源があるとか。
 
 ですので、この地域の民話として語り継がれるような時代背景は結構古い時代でしょうから、
 ロシア正教徒が楽器を使わないのだとすれば、
 このバイオリン弾きのお百姓は、もしかしたらユダヤ人なのでは…と思ったりするのですね。

 「屋根の上のヴァイオリン弾き」を思い起こさせるものがあったなあということも思い出したのでした。