本栖湖の畔で菊地英治はパートナーの西野優馬とキャンプを楽しんでいた。英治が紅茶を淹れ、優馬が手作りのクッキーを用意した。
「えいじが事故に遭ったって聞いたときは生きた心地しなかったよ。」
優馬は紅茶を見つめながら呟く。そんな彼を英治は優しい眼差しで見つめる。こうして生きていられるのは奇跡なのかもしれないが、愛するものを置いて死ぬわけにはいかないという強い気持ちもあった。
「そういえば、夢を見たんだ。」
「夢?」
英治が昏睡中に見ていた夢、それはどこか居心地の悪いモノ。
「私が知らない女と結婚して一緒に暮らしている夢。」
「何それ?そんなのありえないじゃない」
「確かに、ありえないだろ。私が女と結婚なんて、まさに悪夢だよ。だから、私は目覚めることができたのかな。」
英治は夢で見た結婚相手の女性を思い出そうにも顔がハッキリと出てこない。どこかで会ったような気もするが、それ以上は記憶の中から出てこない。
「その女の人ってもしかして昔、付き合ってた人じゃないの?」
英治だって過去に何人かの女性と交際していたがそのどれも長続きすることはなかった。夢の人がその時の交際相手だったとしても、今の彼には関係ない。
英治はそっと優馬の肩を優しく抱いた。