中山ひとみは職場で些細なミスを繰り返し上司から激しく叱責される日々が続いていた。その度に彼女は自分はダメだと思い込みますます落ち込む。

コンビニで缶チューハイとスナック菓子を買い、家に帰ると誰かいる気配がした。誰だろうと思い、恐る恐る部屋を覗くとそこには菊地英治がいた。

「えっ、菊地くん!?どうしてうちにいるの?」

野生動物の研究で北海道にいるはずの彼が、なんと料理、しかもひとみの好物オムライスを作って待っていたのだ。

「研究も少し、落ち着いたからな。それに相原からお前がなんか辛そうだからって聞かされて、慰めにさ」

ひとみは彼が作ったオムライスを食べる。ふわふわの玉子に包まれたほどよい味のチキンライスに懐かしい気分になる。英治はそれを笑顔で見つめている。

「やっぱ、お前の飯食ってる顔最高だわ。なあ、せっかくだから籍いれるか?」




彼の思わぬ発言に驚いた。これまで彼がひとみに対してそんなことを言うのは初めてだった。

「えっそ、そんな。あたしなんかでいいの?」

「なんかって言うなよ。お前の悪いクセだぞ。おれはお前がいいんだよ。お前と一生添い遂げたい。」

ひとみは心から嬉しくなった。ずっと片思いを抱いていた相手からそんなことを言われるなんて思いもしなかった。

その夜、ひとみはうきうき気分でベッドに横になり眠りについた。となりには愛しい彼がいる。






そして翌朝、目覚めるとひとみは自分がベッドではなく床に横になっていることに気づいた。そして、菊地英治の姿もそこにはない。

テーブルには食べかけのお菓子とチューハイの缶。

「あれは…………夢?」

英治がひとみのことを心配して料理を作ってくれることはもちろん、求婚なんてしてくれるわけがない。彼はずっとひとみのことを友人として接し、それ以上の関係は望んでいなかった。

今頃、彼は北海道で冴子と新婚生活をしているはずだ。

ひとみはむなしくなり、残ったお菓子を口に入れた。