数日後、ひとみの容態は急激に悪化した。そして、食事をほとんど取らなくなっていた。透が無理やり口に運ぼうとしても、首を弱く振るだけで拒否する。体重は目に見えて落ちた。目は虚ろに天井を見つめるだけになった。夜中には突然過呼吸を起こし、苦しそうに喘ぎながら意識を失うことが増えた。

「瑛士くんのいない世界なんか………………」

掠れた声で、時折同じ言葉を繰り返す

心を閉ざしたまま、生きることを拒絶しているようだった。
ある夜、透が様子を見に来たときはひとみは布団の中で震えていた。額に触れると熱く、息は浅く荒い。唇は真っ青で、指先は氷のように冷たかった。
「ひとみ! しっかりしろ!」
透はひとみを優しく撫でた。
「透くん、ごめんね。こんな弱いあたしで……」
「自分を卑下するな。お前の悪いクセだぞ!お前はあいつの分も生きろ!それが今のお前にできるあいつへの弔いだろ。」
ひとみは弱々しく首を横に振るばかりだった。目からは涙が溢れ、声にならない嗚咽を漏らす。
「もう……いいの……あたしなんか……生きてても……」
その言葉に、透の胸が締め付けられた。
医師の診断では「極度のストレスによる心因性ショックと栄養失調、脱水症状」と言われ、入院を勧められたが、ひとみは激しく拒否した。家から出たくない、誰にも会いたくない――心を閉ざした殻から、一歩も出ようとしなかった。
容態は日ごとに悪化の一途を辿っていた。
弱々しい息遣いと、時折の過呼吸だけが、暗い部屋に響く。