ひとみは久しぶりにレイジに会いにいった。英治にただ似ているだけじゃなく、レイジそのものに惹かれつつあった。

店に入ると騒がしい。レイジが女性となにやら言い争っていた。

「だから、あなたのことなんて知りませんよ!これ以上しつこいようなら警察呼びますよ」

「なんでそんなことを言うの!私たちは夫婦なのに……」

その言葉にひとみは思わず身を固くした。この場から離れたいのに体が動かない。レイジはひとみに気づき、彼女のそばに向かい肩を抱き寄せた。

「私の婚約者は彼女です。」

突然のことにひとみはどうしたらいいかわからずレイジの顔を見た。彼の表情に嘘をついてる風は感じられない。女性はひとみをにらみつけたかと思ったら、そのまま店を出た。

「あ、あの今の人は?」

「知りませんよ。私の妻だと言い寄ってきて迷惑してたんです。」

レイジは笑顔を見せて笑う。そこでひとみは前に彼がつぶやいた「サキ」という名前を思い出した。もしかしたらあの女性が「サキ」なのか。でもその事をレイジに言うことはなく、先ほど彼から「婚約者」と言われたことの方にひとみは動揺していた。

その日はグリーンカレーを食べ、少したわいもない話をして帰った。


「私の婚約者は彼女です」


彼が言った言葉が頭の中で反芻する。咄嗟に出た方便かもしれないけど、ひとみは少し嬉しくなった。