事件から1年が過ぎた頃、ボーカロイドシーンで人気のプロデューサー、TAKUYAが新曲を発表した。
タイトルは「永遠の誓い ~Church of Tragedy~」
曲は菊地英治と中川冴子の悲劇的な物語をモチーフにしていた。教会での結婚式、突然の狂気、守るための犠牲、そして残された悲しみ、それらを、切ないメロディーと初音ミクの透明な歌声で表現した。
歌詞は英治の優しさと冴子の純粋な愛を讃え、狂気の刃がもたらした別れを嘆くものだった。「白いドレスに染まる赤、永遠の誓いは風に散る……でも、心は繋がってる」
そんなフレーズが多くの人の胸を打った。動画サイトにアップロードされると瞬く間に再生数が爆発。
コメント欄は「泣いた」「英治さん冴子さんは最高のカップル!」「共感しかない」で埋め尽くされSNSで拡散された。多くの人々の共感の渦に包まれた。
TAKUYAはTwitterで「この事件に心を痛め、二人に捧げます」と語り、さらに反響を呼んだ。
この曲は英治の記憶を新たに蘇らせ、冴子のもとに多くの励ましのメッセージが届いた。彼女はそれを聞き静かに涙を流した。英治の存在がこうして多くの人に届いていることに感謝した。
冴子は事件以来ずっと休職していた中学校に復職した。彼女は理科の教師で、生き物と自然の授業を担当していた。英治と一緒に夢見たこと——生徒たちに命の尊さや自然の素晴らしさを教えることが二人の夢だった。
教室に入ると、生徒たちは少し緊張した様子で迎えた。事件のことは知っていたが、冴子は穏やかに微笑み授業を始めた。英治が撮影したクジラの映像を見せたり、収斂進化について説明したり、野鳥の声を聞き比べたり、彼女の話は英治との思い出が織り交ぜられ優しく情熱的だった。
「生き物たちはみんな繋がってるの。愛し合うように自然を守っていこうね。」
生徒たちは目を輝かせて聞き入った。質問が次々と飛び教室は活気に満ちた。冴子は心の中で英治に語りかけた。
「見てて、えいじ。命ってすばらしいものだよ。」
狂気の影は残るが、時間は優しく傷を癒やす。TAKUYAの曲はチャートを賑わせ、冴子の授業は生徒たちの心に種を蒔いた。愛は様々な形で永遠に続く。この物語はここに一つの区切りを迎える。悲劇から生まれた光が世界を照らすように。