ひとみはどうしても彼とよく似た中国人経営者リー・シャンエイのことが気になり、彼のアカウントをフォローした。フォロワーは数百万。華星グループの総帥として、ビジネス誌の表紙を飾るような男の日常は何も特別なことはない。カフェで紅茶を飲んだり、釣りや登山を楽しんだりしている。
その趣味も、好きな音楽や好みの紅茶の茶葉、読む本の傾向まで英治と同じだった。
ある夜、いつものようにスクロールしていると新しい投稿が上がっていた。青いドレスを着た女性とタキシード姿のシャンエイが並ぶ写真。キャプションはシンプルだった。
「生涯の伴侶と出会えた。これからの人生を、彼女と共に」
写真の女性は、美しかった。長い黒髪に、凛とした瞳。笑顔は控えめだが、どこか揺るぎない強さを感じさせる。ひとみとはまったく違うタイプといった印象の女性だった。コメント欄は祝福の嵐だった。
「お似合いすぎる!」
「華星の未来は安泰ですね」
「メイユウさん、本当に美しい……」
メイユウ。
その名前を、ひとみは初めて知った。胸の奥で、何かが音を立てて崩れていく。あの人が英治とは限らないのになぜか心が苦しくなる。
彼と同じ顔の人物が誰かを愛して、そして幸せになっている。それなのにあたしは同じ場所で立ち尽くすだけ。涙が頬を伝う。
その夜、ひとみは夢を見た。英治が突然、ひとみを置いて去っていく夢。ひとみが何度も声をあげても彼は振り返ることなく遠くに消えていく。
目が覚めたときひとみは泣いていた。東京の街はいつも通り動き始めていた。でも二人の人生は、もう交わることはないのだ。