ひとみと健斗が交際して一年は経った。半同棲という形で共に暮らすことになったが、それから先に踏み出すことができない。
ひとみはカウンターに座り、純子に相談した。「ひとみは健斗さんのことどう思ってるの?」
「これからも彼と一緒にいたい」
「ひとみがそう思えるなら、その人はひとみが受け入られたってことだよ。」
「そうなんだけど………」
ひとみはカップを見つめる。
「彼のことまだ気になるんだ。」
かつて、ひとみと付き合い婚姻までいったものの式当日にひとみの目の前で男と駆け落ちした菊地英治。
彼は現在、西尾優馬と北海道で暮らしている。ひとみの中で彼のことは割りきったものだと思われていたが、やはり彼女の根幹は彼に縛られているようだ。
「ねえ、彼に会いに行ってみない?」
純子がひとみの前に顔を寄せた。ひとみは胸を手に当てた。彼に会う。それは今まで考えたことなかった選択。
あの日以降、彼の姿を見るのも辛く彼の写真は全て封印してしまった。
「せっかく忘れたのに………英治さんと会ったら……」
「大丈夫だよ。今のひとみにはちゃんと好きな人がいるでしょ。」
純子はひとみの手を握る。
「私も一緒に行ってあげるから。ね!」
純子の力強い笑顔にひとみは心が震わされ、頷いた。ひとりだと心もとないけど彼女と一緒なら………。