「…危ないよ!君はボクがいないと何にもできないんだから…♡だから…ボクが何でもしてあげるよ…♡君は何にもしなくていいんだからね…♡」
そう言ってカッキーはひとみを背後から抱き締めた。いったいどうしたんだろう?彼とは付き合い長いがこんなことははじめてだった
ひとみの心臓は、突然のことにドクンと大きく跳ねた。カッキーの腕は意外と力強く、背中に感じる彼の体温が妙にリアルで、頭がクラクラした。いつもは軽口を叩き合ったり、冗談でじゃれ合ったりする関係だったのに、こんな風に真剣な――いや、どこか切羽詰まったような声で話しかけられたのは初めてだった。
「カッキー、ちょっと、待ってよ…!」
ひとみは慌てて彼の腕を振りほどこうとしたが、カッキーの力は予想以上に強くて、びくともしなかった。むしろ、彼はさらにぎゅっと抱きしめてくる。その耳元で囁く声は、甘いのにどこか冷たくて、ひとみの背筋にゾクッと何かが走った。
「君は何にもしなくていいって言ったよね? ボクが全部やってあげる。だから、ひとみはただボクを信じてればいいよ…♡」
「信じるって…何!? 何の話!?」
ひとみは混乱しながら叫んだ。カッキーの言葉は優しく聞こえるのに、なぜか胸の奥に不安が広がっていく。いつも明るくて少しお調子者なカッキーが、こんな風にまるで別人のように振る舞うなんて、絶対におかしい。
カッキーはひとみの肩に顎を乗せ、ゆっくりと笑った。その笑い声は普段の彼の無邪気なものとは違って、どこか深い、まるで何かを隠しているような響きがあった。
「ひとみ、君って本当に鈍いよね。ボクがこんな気持ちでいるのに、ぜんっぜん気づいてなかったんだから。」
「気持ち? 何…? カッキー、はっきり言ってよ!」
ひとみは必死に振り返ろうとしたが、カッキーの腕はまるで鉄の鎖のようだった。すると、彼はひとみの耳元でさらに囁いた。
「君はボクのものだよ、ひとみ。ずっと前から、そう決まってたんだ。」
その瞬間、ひとみの視界が一瞬暗くなった。まるで世界が歪むような感覚。カッキーの声が遠くに聞こえ、同時に頭の奥で何かが弾けるような音がした。気がつくと、彼女の手には何か冷たいものが握られていた。見下ろすと、それは小さな、鋭いナイフだった。
「え…? なに、これ…?」
ひとみの声は震えていた。ナイフなんて持っていた覚えはない。なのに、なぜかその感触は妙に馴染んでいる気がした。
カッキーは静かに笑いながら、ひとみの手を握った。その手は温かかったが、ひとみはなぜか凍えるような寒気を感じた。
「大丈夫、ひとみ。ボクが教えてあげるよ。君が何をすべきか、どうすればいいのか…全部、ボクが。」
突然、背後の暗闇から足音が聞こえた。誰かが近づいてくる。ひとみの心臓は再び激しく鼓動を打ち、彼女は思わずナイフを握りしめた。カッキーの声が、まるで魔法のように彼女の耳に響く。
「ほら、ひとみ。ボクを信じて。君はボクがいれば、どんなことだってできるんだから…♡」