「ルミってずっと木俣くんのこと好きだったよね」
純子が働くカフェで、窓の外の夕焼けを眺めながら、ひとみがしみじみと言った。高校卒業して10年以上も経つけれど、こうして時々集まってはおしゃべりをするのが、ぼくらの変わらない習慣だ。
純子は、カップを拭きながら、うんうんと頷いた。
「子犬にケンイチってつけるくらいだもん。あの頃のルミは、木俣くんのことしか見えてなかったもんね。その二人が結婚するなんて、本当に感慨深いよ」
ルミと木俣くんの結婚式は、来月に決まっている。お互いを意識しながらも、なかなか素直になれなかった二人を知っている者にとって、この知らせは本当に嬉しかった。
「そういう純子はどうなの?天野くんといい感じでしょ」
ひとみが、少し茶化すような笑顔で純子に問いかけた。
純子は、頬をほんのり赤らめて、でも真剣な眼差しで答えた。
「私、決めてるの。天ちゃんが声優として軌道に乗ったとき、籍入れるって」
「そうなんだ」
ひとみは、驚いたように目を丸くした。
「声優さんって、本当に大変だって聞くよ。なかなか安定するまで時間がかかるって」
「うん、それは覚悟してる」
純子は、力強く頷いた。
「天ちゃんの夢を一番近くで応援したいし、私も自分のペースでカフェの経営について頑張りたい。それに、二人のタイミングが一緒になった方が、きっとうまくいくと思うんだ」
ひとみは、彼女の言葉を静かに聞いていた。ルミのひたむきな恋が実を結び、純子が自分の未来をしっかりと見据えている。それぞれの道を進みながらも、こうして繋がっていられることの温かさを感じていた。
「私たちも、もうそんな歳になったんだね」
ふと、そんな言葉が口をついて出た。
ひとみは、少し寂しそうな、でもどこか誇らしげな笑顔で言った。
「そうだね。でも、こうして一緒にいられるって、本当に幸せなことだよ」
純子も、顔を上げて微笑んだ。
「うん。これからも、みんなで色々なことを乗り越えていこうね」
夕焼けは、空の色をオレンジから深い紫色へと 変えていく。店に残る私たちを、優しい光が包み込んでいた。それぞれの未来への希望を胸に、ぼくらの「その後」の物語は、ゆっくりと、でも確かに進んでいく。