「何度も始めたのに、ほとんど最後までプレイできたことのないゲームってある?」
谷本聡が口を開く。
「なんだろう……RPGのラスボス直前でプレイしなくなることかな」
菊地英治がつぶやくと天野司がつっかかる。
「えーなんだよそれ。おれはスーパーマリオブラザーズ!なかなかクッパのとこまで行けなくていつもピーチ姫に『救えなくてごめんな』って思っちゃう」
「おれもだ。」
口々に声が上がる。誰もがやったことある大ヒットゲームだけど、けっこう難しい。
みんながゲームの話に盛り上がっているのに中山ひとみだけはなかまの話題に入っていけず部屋の角で猫の頭を撫でている。
ゲーム自体がそんなに好きじゃなく、たまに久美子の家でやってもすぐ飽きてしまう。そんな彼女に佐竹哲郎が話しかけてきた。
「ひとみはどう?」
「どうって?あたしゲームとかしないし……」
「あっそうなんだ。俺と同じだな」
「えっそうなの!?」
哲郎の意外な答えに驚くひとみ。英治や司と一緒に格闘ゲームで盛り上ってそうな雰囲気があるのに………。
「暇つぶしに少しはやるけどそこまでハマんないんだよな。なんつーかタローと遊んでる方が楽しいし、犬といると全然飽きない」
「あっそれわかるよ。あたし、最近保護犬センターに通っててその子たちといるだけで時間忘れるの」
「よかったら俺も一緒に行っていいかな?」
「もちろんだよ。」
ひとみは満面の笑みで哲郎を見つめる。それを見て頬が赤くなる哲郎だった。