ルミと木俣研一の結婚式は日比野朗が勤めるホテルで行われた。
真っ白なウェディングドレスを身にまとったルミを見ながらひとみは感慨深そうに呟く。
「ルミってずっと木俣くんのことが好きだったんだよね」
「私、初めてルミと会ったとき、彼女のこと苦手だった」
「えっそうなの?」
ひとみと違って人見知りしない純子にあるまじき発言に驚く。
「人の彼氏を平気で取るような生意気な後輩。父親が泥棒だからそういう気質を受け継いでいるのかなって」
そういえばルミが相原徹に好意を抱いている噂があった。
でも、それは恋愛とは別のモノだと後から知った。ルミの本命は最初から研一だった。
徹は純子の彼氏だというのはなかま内では周知の事実だったし、純子がルミのことをあまりよく思っていないことはわからないでもない。
「でも、今はルミにマイナス感情は持ってないよ。」
そう言って隣にいる天野司の腕に自分の腕を組ませる。
純子は司と婚約しているのだ。
「あなたたちもう夫婦みたい」
ひとみはふと彼のことを思い出した。大学時代に知り合った2歳年上の先輩。
今は海外を旅してて、たまに旅先からポストカードを送ってくる。
一時期、彼のことを忘れて不貞行為にはしってしまったが、今は彼のことが愛おしくてたまらない。
ボーッと空を見上げていたらひとみの手の中に花束が飛び込んできた。
「おっ次結婚するのはひとみか!」
菊地英治の声がする。
ああ、ブーケトス。
花嫁が投げたブーケを受け取った人間が次に結婚するという言い伝え。
ひとみのそばにカッキーが近寄ってなれなれしく話しかける。
「キミの相手はこのボクさ。」
「冗談やめて、カッキーと結婚するくらいならセイウチと結婚した方がマシよ。」
ひとみはカッキーを突き飛ばす。その拍子に尻餅をつくカッキーの姿にみんな笑う。
その夜、ひとみは彼にメールした。
こんなあたしだけどあなたと結婚を前提に交際したいです。
そして彼から電話がかかってきた。
「一目見たときからひとみと結婚したいと思っていた。こんな俺だけど中山ひとみさん結婚してください!」
その一言にひとみは涙ぐむ。こんなあたしを好いてくれる男性にやっとめぐりあった奇跡に言葉が出てこなかった。