瀬川さんのお別れの会に参加しなかったひとみの元にカッキーがやってきた。
「なにしに来たの」
「瀬川さんからの手紙届けに来たよ。」
カッコつけたポーズで封筒を渡す。普段のひとみなら「キモイ」の一言で手をはたくところだが今はそんな気分じゃない。
封筒を受け取ってすぐ目に入るのが達筆な筆さばきで書かれた自分の名前。
瀬川の書く文字は好きだ。力強く芯が通った感じがひしひし伝わってくる。
封を破り中から便箋を取り出しそれを読む。
ひとみ、世界に何十億と男がいるのに、一人の男にフラれただけで落ち込んでどうする。もっと素晴らしくお前を愛してくれる男はいる。めぐりあってないだけだ。
それと、君の演奏するサックスは居心地がいいから君の演奏で送ってほしい。
瀬川のことを思い出しただけで涙が出てくる。
「ねぇ瀬川さん、こんなあたしに合う素晴らしい男性ってこの世界にいるのかな…………」
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「いるじゃないか目の前に」
「カッキーは論外」
でも、その顔は不機嫌とは程遠かった。