ひとみとの交際は自分の中では順調だと思っている。ただそれでもお互いの間には壁のようなものを感じるのも事実だ。
やはりここはキスのひとつでもして一線を越えたいところだが、いざ本番になるとうまく言葉が続かない。
そもそもキスのきっかけってなんだ。
哲郎は少しでもヒントになればと相原進学塾に置いてある恋愛マンガを開いてみる。
眺めのいい場所から夜景をバックにキス、夜の公園、放課後の教室など2人っきりでいい雰囲気になってキスのパターンが多い。
「そうか」
家に帰った哲郎はタローJr.を前にして真剣な表情で見つめる。
(今、目の前にいるのはひとみだ)

「ひとみのこと好きなんだ。俺と結婚を前提につきあってほしい。俺は本気なんだ!」
キスの練習に夢中で背後からその様子を驚きの表情で見つめる弟の存在に気付かない哲郎だった。