「付き合いたての頃はよく天ちゃんがおごってくれてたけど、いつも彼任せなのも悪いし、私も払うようにしているよ。天ちゃんがごはん代を出してくれたら、私がカフェ代を払う、みたいな。いずれ結婚を考えてるからどっちのお金って感覚もないし、この方がお互いにストレスがないんだよね」

「天野くんってそう考えると最高の彼氏だね。あたしは生理的に無理だけど」

ひとみが言うと久美子が不機嫌そうに口をひらく。

「それに比べたら安永くんは最低な人間。」

ここ最近、久美子と安永宏の仲が険悪だというウワサを耳にしたが、久美子の態度を見る限り2人の仲はカップルとしては終わっていると感じた。

「もっぱら支払いは私、たま~にあいつが支払うことがあっても、それは決まって牛丼屋かファーストフード。」

「それは安永くんちが裕福じゃないから………」

ひとみは宏のことになるとつい親身になってしまう。

「でも、デートだよ。男のくせにみみっちいっていいか、 マジむかつくむかっこないだもあいつとラーメン屋に行ったとき………」

ずっと気になっていたラーメン屋に1週間前に宏と行った久美子、しかも宏のおごりということもあってすごく上機嫌だったということもありトッピングとして味玉を注文しようとしたら、「味玉はやめて」と一蹴された挙げ句「どうしても味玉ほしいんなら、味玉代は久美子が払えよ」とまで言われてその一言で気分が悪くなり、せっかくのラーメンが楽しめなかったという。

「それは最悪、そんなドケチ男別れちゃいなよ」

純子ははっきり宏に対して嫌悪感を露にするが、ひとみは宏に対してそんな態度はとれない。

「っていうか、私とあいつってそんないわゆる男女の仲じゃないから別れるって範疇じゃないしイヤなら会わないだけだから。」

そう言ってコーヒーをブラックで飲む久美子がどこか大人にみえた。