物心つく頃から絵を描くことが好きだった。

学校でも授業なんて聞かずにずっと絵ばかり描いていた。絵を描くことだけが自分の生きがいだった。

今日もいつものように教室の隅で絵を描いていると突然声をかけられた。こんなのは中学入って初めてだったので思わず声のほうに顔を向ける。

そこに立っていたのは菊地英治。クラスメイトだけどほとんど会話なんてしたことなかった相手だけに心底びっくりした。

「おまえ、絵がうまいんだな。」

「絵を描くのはおれの生きがいだから・・・・・・」

「なあ、廃墟って興味ある?」

「興味ないって言ったらウソになるな。」

朽ちてしまった建物と緑の組み合わせが好きで、そういう写真を新聞で見かけるとつい切り取って保存しているくらいだから好きの部類に入るんだろうな。でもそんなことは口に出しては言わない。

「なんでそんな事言うんだ?」

「夏休みにさ、男子だけで廃工場を秘密基地にして遊ばないか?」

秘密基地というワードに心躍る。小学生の頃読んだ「トム・ソーヤの冒険」を思い出す。だけどそれはお話の中のこと自分とは縁がないものだと思っていた。

「無理なら無理でもいいんだぜ。自由参加だから。」

「行くよ。なんか面白そう。」

 

中1の夏休みに起こった出来事は秋元尚也にとって特別なものとなった。あの工場で描いたスケッチを見るたびあのひと夏のことを思い出す。