中学の頃から好きだった。
だけど、それを誰にも言わずただ心の奥底にしまっていた。
彼女を前にすると言葉が出てこなくなる。

「ひとみは彼氏できたのかな?」
誰ともなしにつぶやくのは佐竹哲朗だった。専門学校からの帰り偶然、立石剛と出会ったので、駅前にあるファミレスで久しぶりに語り合う事にしたのだ。
高校を卒業してからは仲間たちと会うことはほとんどない。だからこそたまに会うとつい話し込んでしまう。
「なんでそんなこと気になるんだ?」
立石が聞く。お前には関係ないだろうと言わんばかりの顔で
「そりゃそうだろう。惚れた女の恋路くらい・・・・」
「はっ!?どういうことだよ。」
佐竹がひとみの事を好きだという事を知っているのは安永だけ、彼は余計な事を言わないので立石がその事実を知る由もない。ただ、青森に行ったとき男女でペアになった際、相原が佐竹とひとみを組ませたのは、うすうす佐竹の想いに気づいているんじゃないのかといろいろ勘ぐったが真意は不明のままだ。
「俺さ・・・・ひとみの事が好きなんだよね。中学の頃からずっとその気持ちは変わらない・・・・・・」
「マジか!?」
立石はコーラを飲み干す。
しばらく黙ったあと、立石がつぶやく
「俺も好きだったんだよな。ひとみのこと。」
「えっ!?そうなのか!」
「俺だけじゃねえ。他にもいたはずさ。」
スタイル抜群で黒髪美人、たいていの男はほっとかないだろう。まさしくひとみはクラスのマドンナ的存在だった。
「だから、菊地が河原でカミングアウトしたときちょっとむかついたんだ。抜け駆けしやがってコノヤローって。でもあいつはその後、冴子のことがすきになってひとみのことを振っただろ?最初はイラッとしたけど、しばらくして菊地も俺も同じなんだって気づいた。」
「同じ?」
「なんていうのかな、俺と菊地がひとみに抱いていた想いって恋愛とは違うんだよな。ドラマのセリフで中学の恋は麻疹みたいなもんっていうだろ。そんな感じ・・・・好きなんだけど、好きじゃないって言うか・・・・」
「俺もそうだって言うのか?」
「そんなのわかるわけないだろう!おまえ自身で判断しろよ。」
佐竹は考える。
俺がひとみが好きなのは確か。
時々、ひとみはどうしているのか思うことがある。そうなると何も手につかない。
「ひとみには言ったのか?」
「言ってない。」
「告白してみたらどうだ?」
「それができたら苦労しないって。」
「河原に呼んで、叫ぶとか・・・・」
「そんなことできるかよ」
恋愛感情を持っていなかったからこそあんな未成年の主張みたく叫ぶ事ができたんだろうなと思う。