中山ひとみは横浜にある星が丘学園という私立中学で社会教師をしている。
元々歴史好きで歴史のすばらしさ、おもしろさを未来ある子どもたちに理解してもらいたい、という理由で教師になったのだが、現実はそうはうまくいかない。
歴史モチーフのマンガやゲームが人気あるから、当然歴史の授業も人気なんだろうなと思っていたのに、実際に授業してみたら生徒のほとんどがまともに受けてない状態だった。
ひとみはすっかり教師としての自信がなくなってしまい、彼女の婚約者が店長を勤めるアニマルカフェで日々愚痴る毎日だ。
甘利卓はそんな彼女を慰めようとはせず、ただ黙って彼女の愚痴を聞き、カフェオレとサンドウィッチをさしだすのみである。
ひとみは一通り飲食を済ませたあと、このカフェで飼われている動物たちと思う存分ふれあいを楽しむことがここ最近のリラックス方法だ。
「は~いっそのこと教師辞めちゃおうかな・・・・・実家の料亭でつつましく女将ってのも悪くないし・・・・」
ひとみの実家は玉すだれという料亭だったが、数年前から規模を小さくし小料理屋としてリニューアルしたのだ。
「だったら、ここで働けよ。君がウェイトレスしてくれたら男性客が増えるぜ。」
「悪くないわね・・・・・」
「それにここには星が丘学園の子が来るから、おれはそいつらの勉強を教えてやっているんだ。だから、ひとみもそうしろよ。」
甘利とは大学で知り合った、2つ年上だったがお互いに歴史好きだってこともありすぐに意気投合した。一応彼も教職免許を持ってはいるが、先生として学校で働く気はない。教える行為は好きなんだけど教育組織のしがらみに囚われたくないからとのこと。
「それにさ授業で習う歴史ってつまんないと思わないか?ただひたすら年号なんか暗記したりして、歴史ってそういうものじゃないと思うんだよね。」
彼に言われて思い当たる節がある。ひとみが持っている歴史の知識は授業ではなく自らが本などで得た知識なのだ。一方的押し付けるのではなく生徒たち自らが興味をもって近づいていけばいい、自分はそれのサポートに過ぎないのだ。
「ありがとう、卓!」
ひとみは愛する彼のほっぺにキスをした。