「うわぁぁぁ~ん!」
突然、来々軒に飛び込んできて、カウンターに突っ伏して大声で泣き出したひとみに対し、さすがの純子もどう対応していいのかわからない。
「ひ、ひとみ?」
恐る恐る声をかけてみる。今の時間帯は暇だからいいけど・・・・さすがにほっとくわけにはいかない。
「どうしたの?」
「菊地くんが・・・・」
「英ちゃんがどうしたの?」
「私のこと・・・・もう好きじゃないんだって・・・・・」
この衝撃の発言に純子はビックリした。中学のときからひとみのことが好きでみんなの前で公開プロポーズをしたあの菊地英治がそんな事をいうなんて。
「なんかの間違いじゃない?ほら英ちゃんいつもひとみにひどい事言ってるけど、あれは彼なりの愛情表現だって・・・・」
いつだったか英ちゃんが「ひとみ相手だとどんなきつい事も言えるんだ」といっていたのを聞いていた事がある。最初はひどいなと思ったけど、久美子いわくそれもまた愛情表現の1つらしい。
ひとみに対するドS気質こそ菊地の愛ということか
「ううん、はっきりキライって言ったの。」
高校生になってからは学校も別になって会う機会も減った。たまに仲間で集まる事があってもまったく会話をする事がない。理由はわかっている新しく彼女ができたからだ。
まわりもそのことに関して気にしている様子もなく、むしろこの恋路を応援している雰囲気が感じられて純子は複雑な気持ちを抱いた。
菊地の彼女=中川冴子とは何度か会っているから、彼女が悪い人ではない、むしろ菊地とはいろいろ趣味があってお似合いのカップルだと思う。なんならこの恋を応援したい・・・・・でも、そうなるとひとみはどうなるの?
告白されて、菊地のことが好きになったのに、好きじゃなくなったからふるってなんか身勝手。
急に菊地に対して腹が立ってきた。
「英ちゃん、どうしてひとみを振ったの?」
河川敷に呼び出して問い詰める
「別に振ったわけじゃねえよ。元々アイツとは何もなかったし・・・・」
何もなかった・・・・この言葉に純子の琴線が触れた。思いっきり菊地の頬をビンタする。
「何すんだよ!」
「何もなかったじゃないでしょ!!散々ひとみが好きだって言っておいてそれはひどいよ」
「ひとみが好きだっていうのはおれにとってはインフルエンザにかかってみたいなもの・・・・カッキーが麻衣を好きだって聞いたときそのことに気づいたんだ。おれがひとみを好きだってのは恋愛じゃなかったって。」
純子の目から涙が浮かぶ
「冴子を一目見たとたん体に電気が走るのを感じた・・・・これが恋愛なんだなっておもった。」
「英ちゃん・・・・変わったね。」
純子はその場を逃げるように走り出した。
来々軒の前まで来ると天野がいた。
「天ちゃん?」
「こないだ借りたノート返しに来たんだけど・・・・・」
手には私の数学のノートを持っている。
純子は思わず天野に抱きついた。
「ど、どうした?」
「しばらくこのままでいさせて・・・・。」
心が休まる気がした