キノコ王国から連れてこられ、雷鳴轟く谷にそびえる巨大な城。その最も高い塔にある部屋にピーチ姫は軟禁されていた。かといって彼女自身は縛られているわけでもなく、部屋の雰囲気も豪華な家具に美術品、テーブルの上には花びんに生けられた花が置かれている。
 部屋の外にいる見張りを除けばそれは普段とさほど変わらない感じだった。
「何故私はここにいるの?」
ピーチはずっと思っていた。生まれてこのかたキノコ王国から出たことなく周りから大事に育てられてきた。それは自分がキノコ王国王位継承者であって、自分自身には特別な力があるわけでもないから。
 ここの城の持ち主はクッパという、闇の世界では有名な人物で、強力な魔道士でもあった。巨大なる組織クッパ団を率い、全世界の支配権をもぎ取ろうとしているような男が自分を狙う理由はキノコ王国そのものだろう。
「それにしても人質にしてはこの部屋豪華だわ。」
ピーチは部屋の隅々を眺めまわす。すると、ドアの開く音がした。ピーチは思わず緊張が走る。しかし、部屋に入ってきたのがまだあどけなさが残る子どもだとわかってほっとした。
「あの、あなたは?あなたも連れてこられたの?
「違うよ。」
「じゃあ、どうしてこんなところにいるの?
「ここはボクの家だもん。」
この答えにびっくりした。どうやらこの少年はあのクッパの息子らしい。確かに髪の色は同じだがあの冷酷そうな男とこの少年が親子だなんてにわかには信じられなかった。
「お姉ちゃんがボクの新しいママになってくれるの?」
「えっ?」
さらにびっくり
「お父ちゃん、いってたもん。ボクには母親が必要だって。だから連れてこられたんでしょう。」
「そうなの、私は何も聞かされてないから。ところであなたはなんていうの?
「ボクはジュリアス。Jrってよんでよ。」
「そうJrのお母さんはどんなひとなの?」
「わからない、ボクが生まれてすぐ死んじゃったって聞いたから。」
「ごめなさい」
「いいよ。そんなこと。」
口ではそんなことを言っていたが、やはり寂しさは隠しきれてないようだ。
「この部屋ねお母ちゃんの部屋だったんだって。だからこの部屋にいるとなんかお母ちゃんがいるような気がするんだ。」
「そうなんだ。」
そんな部屋に自分を入れて置くなんてクッパは何を考えているのだろうか。
「ねえ、ボクと一緒に外へ行かない?」
「えっでもいいのそんなことして。」
「だいじょうぶだよ。」
そういってJrはピーチの手をつかんで歩き出した。
城内を歩いていくと中庭にでた、そこには色とりどりの花々が植えられていた。思わず声を上げるピーチ。まさかこんなところにこんなきれいなものがあるなんて。
「どう?少しは気分がよくなったでしょ。」
「ええ。」
しばらく2人でそこにいると、遠くのほうからやかましい声がした。
「お。おい、なんで姫様がこんなところにいるんだよ。」
声の主は組織のブレーンイギーだった。
「あっ、やば。」
Jrはピーチの手をしっかり握り、走り出す。
「ち、ちょっと」
「やーイ、追いかけてこれるものなら来てみろ。」
「Jr様いい加減にしてくださいよ。そんなことしたらクッパ様に怒られますよ。」
体力のないイギーをどんどんはなし2人はどこまで走っていく。Jrといるとなぜか楽しい、この時間がいつまでも続けばいいなピーチはそう思った。
そんな願いもむなしく二人の前にクッパが現れ、楽しい時はあっけなく終わってしまった。
「なにしているのだ。」
「あ、お父ちゃん。」
Jrはまるでいたずらが見つかったかのようにおとなしくなる。
「彼女は大事な客人だ。もし何かあったらどうしてくれる。」
「ごめんなさい。」
「あ、あの、Jrは私を元気付ける為にしたことなのです。」
「他人は口を挟まないで欲しい。これは私の家族の問題だ。」
サングラス越しからにらまれると引き下がる得ない。
 こうしてピーチは再び元いた部屋に軟禁された。
だけど、クッパという男がどんな男か少し垣間見えた気がした。冷酷そうにみえて実は家族想いで紳士だということを