「急に呼び出してなんのようだ?」
銀の鈴動物園にある大きなクスノキ、幼稚園時代からあるここのシンボルといってもいい。
そのクスノキの下にいるのは滝川アリサ。菊地英治の初めての教え子。
現在は筑波にある小さな動物園で働いている。
「私・・・・先生に伝えたい事があるんです。」
卒業しても、彼女は菊地のことを先生って呼ぶ。
「わ、私・・・・先生の事が好きなんです!菊地英治という人間を心から愛しています。」
アリサの衝撃の発言に菊地は頭を殴られたような衝撃を受けた。告白をしたことはあってもされた事なんてなかった。しかも相手はかつての教え子。どう答えていいのかさっぱりわからない。
「先生の恋人のことも知っています・・・・。そのことで今だ先生が人を好きになる事ができないのも・・・・・でも、私・・・・止まらないんです!先生の事を考えるだけで胸が苦しくて・・・・いてもたってもいられない・・・」
それは菊地が冴子に抱いていた感情と同じだ。アリサもかつての菊地と同様に苦しんでいる。
「だから、結婚を前提につきあってください!」
「そうか。」
相原はいつもどおりだ。
「俺だってアリサのことは好きだよ。でも、それは恋愛とかじゃなくて初めての教え子で・・・・ものすごくうまが合うって言うか・・・・」
「それでいいんじゃない?」
カウンターの奥から純子が答えた。
「趣味の合う人と一緒にいるだけで幸せじゃん。英ちゃんには幸せになって欲しいって冴子さんだって思うよ。もちろん私も。」
数日後、俺はアリサに電話した。答えは「OK」だ。
「つきあうんだったら、先生って呼ぶのはやめろ。」
「英治・・・・・名前で呼んでくれ。」
アリサは受話器を持ったままうなずき、つぶやいた。
「英治さん・・・・・」