“月宮殿の設計図は月の面(おもて)である。誰も知らないことであるが、私は月面のあのくまの通りをこの宝座に移写したので、月の面を眺めては寸分も違わぬようにと試みた……”
“「明(あきら)かなオリオン星座地にもあり」と云ふ冠句が出て居たので抜いておいた。オリオン星座を地にうつすのが月宮殿であつて、敷地も同じ形に出来て居るのである。……”
(加藤明子編「水鏡」第二天聲社より)
(月宮殿について、大国以都雄氏による説明)
“……ミカエルは、四十八宝座すなわち国魂の宝座の中に立ち、思念をもって号令すれば、その国魂は、電波のごとく波動して、各地域の霊界にひびき、その地域が霊的に活動する。また各地域の霊的な動きは、そのアンテナである月宮殿内の国魂石に霊的現象を生じ、ただちにミカエルに判る。いってみれば、国魂宝座は霊的の放送所であり、また地方からの霊的の受信所でもある。「ミカエル一度たちて天下に号令すれば、天地ことごとく動く」という古書のごとく、救世主神の宝座には、霊的神業の場所として、こういう形体の宝座が必要だということだ……”
(「おほもと」昭和45年11月号 大国以都雄『天恩郷建設の神秘(12)』より)
*出口王仁三郎聖師は、「みろく(救世主)神」とほぼ同等の意味で「ミカエル」という単語をしばしば使われました。キリスト教における「ミカエル」は大天使にすぎず、決して神ではありませんが、主神の救世の神業において中心となって働く天使であり、その意味でみろく神の一部とみなされたのだと思います。
*昭和三年に出口聖師により亀岡天恩郷内に建造された「月宮殿」とは、最奥天国・紫微天界の月の大神様の神殿を移写したもので、地上における、月の大神=救世主神・神素盞嗚大神の最高神殿であり、その敷地にはオリオン星座もまた移写されました。古代ギリシャ、エジプト、ペルシャの神殿を組み合わせた独特の形をした石造りの神殿で、写真のような一見昔話に出て来る龍宮城のような外観をしていました。各所に全国の信徒から献納された大小様々な国魂石(霊石)が配置され(どの石も必ず三面が表に出るように置かれたそうです)、十字型の屋根の中央には三つの球状のムーンストーンがまるでアンテナのように重ねられて、そして内部の大理石で造られた神座には六つの霊石が御神体として祀られていました。この月宮殿の建造は、邪神界にとっては一大脅威であったとされ、建設の総責任者であった大国以都雄氏によれば、工事中に様々な怪異・妨害行為があったと報告されています。夜中に敷地内に侵入し建物を壊そうとした者を捕まえると、あきらかな霊懸かりで「これが完成するとわれわれの負けが決まってしまう」と口走ったとも伝えられています。しかし、せっかく完成した月宮殿も、昭和十年の第二次大本事件で1500発ものダイナマイトによって破壊されてしまい、事件解決後は、聖師によって「月宮宝座」がその跡地に築かれました(現在は禁足地になっています)。
残念ながら、もはやこの地上には月宮殿は存在しないわけですが、たとえ地上の神殿が破壊されても、神界にある大神様の神殿は永遠不変であり、いったん地上に月宮殿が完成し、現界と紫微天界との霊的な交通が可能となったからには、その作用は人々の意志想念が継続する限り絶えることなく、破壊を免れた御神体石の霊力も今なお失われてはいません。そもそも出口聖師は、月宮殿の完成直後、側近に「いずれ、これも壊されてしまうのか……」と告げられており、既に将来破壊されることを前提に建造されたのだということがわかります。そして、大本事件勃発後には、「神殿は破壊されてもいい。まだ『霊界物語』が残っている」と言われました。「『霊界物語』さえあれば、これを種にしてミロクの世は実現できる」とも言っておられます。霊界物語を音読することで、神界に存在する月宮殿とも霊的に結びつくことができるのではないでしょうか。