・「死の灰」の浄化
“昭和七年頃、当時の私達、昭和青年会の本部員は、会長出口聖師を中心として、信仰問題や時局問題について、しばしば座談会を開催したものである。
その時、会長から次のような話が出て、私達との間に質疑応答が交わされた。
「将来、空から毒が降ってくるようになる。その毒は呼吸しても体に触れても、又それがついた食物を食べても、人体に危険を及ぼすものである。そしてその毒が多くなると世界は大騒ぎになる」
「それをふせぐ方法はありますか」
「それを防ぐには二つの方法が必要である。その一つは大風を起こして、その毒を北極へ追い払うことである。そしてもう一つは個人々々が体の内外の毒を消すことである」
と二つの方法について詳しく具体的に説明があった後、
「でもそんなことを云うとうるさいから、世間には発表しない方が良い」
とのことであった。
その話を聞いた当時は、私達はイベリット等の毒ガスぐらいに考えていたのであるが、今では、最近問題になってきた「死の灰」のことであったと思うようになった。
その記録は速記には残されたはずであるが、ついに公表はされなかった。そしてその座談会に出席していた六、七人の本部員もすでに大半は故人となってしまった。
それから二十数年の歳月が流れ、「死の灰」が世界的の問題になってきた昭和二十九年頃、私は某大学教授に会って、たまたまこの問題を話し合ったことがあるが、その際、同教授は、
「私は出口さんから詳しく死の灰に対する予防措置と治療方法を聞いているので、その後科学的検討を続けると共に、発表の時期と方法について準備を整えている」
と言っていた。
しかし、「死の灰」を追い払う方法については、同氏も何も語らなかったし、私も口にしなかった。
その座談会の時であったかどうか、はっきり記憶していないが、聖師は次のような話をされた。
「地上の穢れは諸々の河川から大海に持運ばれて、暗黒の海底で不断の浄化作用が行われており、また大気の汚れも北極と南極に吹き送られて、極地の氷雪の中で絶えず浄化されているのである」と。
霊界物語には、霊界の太陽から最も遠く離れたところに根の国底の国があって、永劫の贖罪が行われていることが書かれている。
地球上において、太陽の暑熱から最も遠く離れている南北の極地が根の国に相応し、その光明から最も遠く隔たっている海底が底の国に相応するのであるから、大地や大気の汚染が、海底と極地で、不断に浄化されていると云われた聖師の言葉も、物語を拝読しておられる人々には、容易に理解し得られることと思う。”
(「おほもと」昭和32年11月号 葦原萬象『原子力の平和利用』より)
・原爆症の治療法