オイルサンドのCO2を貯留、カナダ
Photograph by Larry MacDougal, Canadian Press Images/AP
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石油燃料代替資源の有望株、カナダの
オイルサンド(油砂)。油分抽出の過程で
排出される二酸化炭素(CO2)を回収する
世界初の大掛かりな取り組みが、2011年夏、
命運を左右する大きなハードルを乗り越えた。
13億5000万ドル(約1040億円)に上るコスト
の3分の2近くを政府が負担することで合意
したのだ。
ただし、シェル・カナダ・エナジー社率いる
コンソーシアムが出資の最終決定を下す
までには、さらに規制のハードルをクリアしな
ければならない。この「クエストCO2回収貯留
(Quest Carbon Capture and Storage)」
プロジェクトは、世界でも5本の指に入る
大規模なCO2回収貯留(CCS)計画である。
アルバータ州の塩水帯水層の深部に、
年間120万トンのCO2を閉じ込めるという。
効果を疑問視する意見も出ているが、
プロジェクトの推進派は、実験的プロジェクト
への巨額投資は重要だと口をそろえる。
アルバータ州は豊富な石油資源がありながら、
CO2排出がネックとなり開発できずにいた。
技術と地質を活用するプロジェクトが成功
すれば、CO2問題解決の突破口となる。
◆豊富な石油、高いコスト
アルバータ州のオイルサンドは世界屈指
の油層だ。
しかし、露天掘りの砂や粘土、水の混合物
からの石油抽出は、費用が掛かりすぎると
長年考えられてきた。
しかし、この10年で世界的に石油価格が高騰、
採算が合うようになり、カナダの石油確認
埋蔵量はサウジアラビア、ベネズエラに続く
世界3位へ躍り出た。
ただし、ねばねばした油分(ビチューメン)を
抽出して、最終的に重質原油を得るには、
採掘、加熱、改質などの工程を経なければ
ならない。
カナダ環境省によると、従来の石油生産と
比べ1.6倍の温室効果ガスを排出するという。
クエスト・プロジェクトでは、オイルサンドの
処理の中間段階(改質)で排出されるCO2の
回収を目的としている。
CO2はアミン溶媒で吸収し、液状に圧縮した後、
直径30センチのパイプラインで約80キロの距離
を輸送する。
目的地はアルバータ州都エドモントンの北東
に位置する農業地帯の中心だ。
そこで特殊な井戸に注入し、2キロ余り地下の
塩水帯水層の深部に閉じ込める。
シェル・カナダ・エナジー社によると、エドモントン
近郊のスコットフォード・アップグレーダー
(改質装置)でCO2は35%カットされ、最大で
年間120万トンが貯留されるという。
世界では同規模のCCSプロジェクトがいくつか
事例が代表的だ。
しかし、非従来型の石油・ガス事業での取り組み
は今回が初である。
◆解決すべき多数の課題
カナダの環境保護団体ペンビナ研究所の
マネージング・ディレクター、クリス・セバーソン・
ベイカー氏は、「オイルサンドの石油をタービン
やボイラーで燃焼させた後の段階にもCCSを
活用できれば、本当の意味で成功と言える。
しかし、今回の計画よりはるかにコストがかさむ」
と話す。
同氏によると、その段階で排出される温室効果
ガスが最も多いという。
ペンビナ研究所はオイルサンド業界を監視する
Webサイト「oilsandswatch.org」を運営している。
2007年、「気候変動に関する政府間パネル
(IPCC)」の一員としてノーベル賞に輝いた
ステファン・バチュ(Stefan Bachu)氏は、
「CO2回収に安価な方法はない」と述べる。
「“アメ”と“ムチ”があって初めて業界は動く」。
クエスト・プロジェクトの場合、政府の補助金
という“アメ”で計画を推進している。
ただしバチュ氏は、安全、確実、大規模な
非従来型石油向けCCSの存在を示す初の
プロジェクトという謳い文句があったからこそ、
補助金が得られたのだと強調する。
今後も同様のアメが期待できるわけではない。
CO2への課税や課金で、業界に技術の利用
やさらなる開発を強制する方法も存在する。
ただし、増加した開発費などは、消費者が購入
する製品に転嫁される可能性がある。
クエスト・プロジェクトが規制当局の認可を受け、
コンソーシアムが実行を決めれば、CO2回収は
2015年に開始される予定である。
Photograph by Larry MacDougal, Canadian Press Images/AP
ナショナルジオグラフィック日本語公式サイト
最新旅客機・ボーイング787の実力とは?

まもなくデビューする最新鋭の旅客機
「ボーイング787」。
日本の技術で、これまでにない快適性
を実現したというその秘密をアメリカ・
ロサンゼルス支局・加藤高太郎記者が
取材した。
アメリカ西海岸、シアトル郊外にある
ボーイング社の工場で8月6日、世界が
注目する旅客機が報道陣にお披露目され
た。
姿を現したのは、次世代の主力機として
期待されているボーイング787の
全日空第1号機。
愛称は「ドリームライナー」、世界の
どこよりも早く全日空に納入されること
になっている機体だ。
ボーイング787は、座席数が200
から300ほどの中型旅客機で、燃料費
が高騰する中、これまでより燃費を2割
向上させたことが大きなセールスポイント。
部品の35パーセントに日本製を使い、
機体の軽量化と強度アップを実現している。
当初の予定から3年も遅れてのデビューと
なったが、ボーイング社にとってはまさに
社運をかけた旅客機となる。
会見で、ボーイング社のスコット・
フランチャー副社長は、
「787はボーイング社にとって、非常に
長く、挑戦的な道のりでした。とても興奮
しています。
今日はボーイングにとって素晴らしい日
です。全日空にとっても同じだと思いますよ」
と、語ると、同席した全日本空輸の森本光雄
副社長も「ええ、とても興奮しています」
と、応えた。
今回、初めてボーイング787の客室内
が公開された。
内部は、明るく、天井も高いため、開放的
な印象だ。機体の強度が増したことで、
客室を広くすることができたという。
また、3割ほど大きくなった窓には、新しい
機能も付いた。通常、窓から入る光を遮る
ためには、シャッターを使っていたが、
新型機ではボタン操作による電子制御で
明るさの調整を行う。さらに照明には、
LED(発光ダイオード)を使い、色合い
を変えることもできる。
また、女性にうれしいのが「加湿器」が
ついたことだ。
これまでは機体がさびる恐れがあったため
使用できなかったが、炭素繊維などを採用
することで、導入することができるように
なった。
加湿器の設置について、客室乗務員は、
「機内は乾燥するので、それが改善できる
ので、お客様に快適に過ごしてもらえると
思う」「(客室乗務員にとっても)お肌の
乾燥を防げるのでうれしいです」と笑顔で
語る。さらに、ボーイング787には
トイレにも秘密があった。
内部には窓がついており、便器には温水
洗浄機までついた特別設計になっていた。
最新鋭機ならではの快適性を実現した
ボーイング787。
その機体を送り出すのが、世界最大の容積
を持つという最終組み立て工場だ。
そこでは、巨大な工場の中で、ボーイング
787が一度に4機も、流れ作業で組み立て
られている。
機体は、それぞれの航空会社の仕様に合わ
せてオーダーメイドで作られる。
寄せられた注文はすでに800機以上という
ヒットぶりだ。
基本価格は日本円で一機あたり約150億円
だという。
ボーイング787は7月、試験飛行で
初めて日本に飛来した。
中型機でありながら、燃費を向上させること
によって、大型機でなければ無理だった長い
距離の飛行が可能になった。
これにより、今までは収益が見込めなかった
路線でも、新規開設される可能性が出てきた。
55機を導入する予定の全日空にとっては、
今後の戦略を担う重要な旅客機となる。
全日本空輸の森本光雄副社長は、「性能面
では羽田からアメリカ東海岸、ヨーロッパ
にも飛べる性能を持っている」「国際戦略機
として使っていきたい」と抱負を語る。
この1号機は、ボーイング社から全日空に
引き渡された後、10月下旬にボーイング
787による世界初の営業飛行として
成田から香港へのチャーター便として運航
される予定だ。
日本の技術が詰まったボーイング787が、
まもなく世界の空へと羽ばたいていく。
日テレ
メタンとCO2、融解する永久凍土
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洞窟の壁に現れた翡翠(ひすい)鉱脈
のように、緑色の水が北シベリアの海へと
流れ込む。
NASAの地球観測衛星ランドサット5号が、
ロシア北東部のオムリャクスカヤ湾
(Omulyakhskaya Bay、左上)
とクロムスカヤ湾(Khromskaya Bay、下)
を撮影、8月11日に公開した。
湾周辺には、永久凍土が融解した水で
形成される「サーモカルスト湖」が点在して
いる。
融解する永久凍土とサーモカルスト湖は
いずれも、二酸化炭素やメタンなど、温室
効果ガスを大気中に放出する。
将来の気候変動に影響すると見られており、
綿密な観測が続けられている。
Image courtesy Landsat-5/NASA
ナショナルジオグラフィック日本語公式サイト










