もしビジネスパーソンや学生さんのあなたが、後輩からこう質問されたらどう答えますか。
「先輩、現金主義と発生主義って、どういう違いがあるんですか。」
「えーっと、現金主義は何でもお金で解決しようとすることで、発生主義は何かを発生させて解決しようとすることだよ。」
「・・・。（一応感心したふり）」
・・・あのー、「何でもお金で解決しようとする」はまだ意味が通じますが、「何かを発生させて解決しようとする」って、どういうことですか。
中途ハンパなボケをするぐらいなら、素直に「わからない」といったほうがいいと思いますが。
『・・・中途ハンパなボケしか思いつかなかった人、説明をお願いします。』
結論からざっくりいうと、「現金主義」と「発生主義」では「取引に関する考え方」が違います。
「現金主義」がお金の出入りを基準にして取引を認識する考え方であるのに対して、「発生主義」は取引が発生した時点で記録する考え方です。
具体例を挙（あ）げて、説明してみましょう。
ここに、架空の大学、デラーズ大学（仮名）があると仮定します。
デラーズ大学商学部の１年生、ケリィさん（仮名）は、「会計学」の講義を受けていました。
講義では、担当のシーマ教授（仮名）から、「次回の講義までに、『現金主義と発生主義の違い』について説明できるようにしておくこと」という課題が出ました。
しかし、これまで会計についてほとんど勉強していなかったケリィさんは、次回の講義までに説明できるかどうか不安でした。
そこで、商学部の２年生で、クラブの先輩でもあるガトーさん（仮名）に教えを請うことにしました。
すると、ガトーさんは、まずは現金主義について説明してくれました。
現金主義は、お金の出入りを基準にして取引を認識する考え方です。
お金が入ったときに収益のブロックを積み、お金を払ったときに費用のブロックを積むのです。
たとえば、電車に乗って交通費を払う場合は、現金の支払いと取引の発生が同時なので、現金主義で問題ありません。
次にガトーさんは、発生主義について説明してくれました。
発生主義は、取引が発生した時点で記録する考え方です。
単純な商売ならば現金主義で問題はないのですが、現代の商売では信用取引と呼ばれる「掛け」の取引が一般化しています。
掛けとは取引が生じた時点よりもあとでお金のやりとりをする取引で、いわゆる「ツケ」のことです。
取引の発生と決済のタイミングがずれると、現金主義による記録では商売の実態をあらわせません。
そこで、取引はがお金の出入りを基準にするのではなく、取引が発生した時点で記録する発生主義の考え方が生まれたのです。
たとえば、携帯電話は、今月すでに使用してしまった通話料に対して翌月以降に請求書がきて代金を支払います。
反対に、家賃は、まだ使っていない翌月の賃料を前月中に支払います。
このように取引の内容が多様化していくと、現金主義では商売の実態をあらわせなくなるのです。
ガトーさんの説明のおかげで、ケリィさんは次回の講義で『現金主義と発生主義の違い』をきちんと説明できそうです。
なお、日本の現在の会計制度は発生主義にもとづいていて、取引が発生した時点で記録することになっています。
ちなみに、「機動戦士ガンダム００８３」に登場したケリィ・レズナーは、
ＯＶＡ版ではＭＡヴァル・ヴァロに搭乗し、コウ・ウラキの駆るガンダム試作1号機フルバーニアンと激戦を繰り広げて最終的に撃墜されましたが、
劇場版ではコウとの戦闘シーンが完全にカットされ、ただの街のジャンク屋という端役で終わっています。
（参考：岩谷誠治／著，『早い話、会計なんてこれだけですよ！』，日本実業出版社，２０１３）
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