今週も、水曜日は震災関連記事をお送りします。
今回紹介するのは、「自治体クラウド」です。
自治体クラウドとは、「地方自治体の情報システムを民間のデータセンターに移し、複数の市町村がシステムを共同で利用することができる環境、
またはその環境をつくる取り組み」のことです。
(共同で利用できるのは、自治体の住民基本台帳や税務、保険などの
基幹システムです。)
総務省では2000年前後から、自治体の業務を電子化する「電子自治体」
プロジェクトを推進してきましが、
その一環として2009年から、サーバーなどITシステム構築に必要な機器を
データセンターに置き、ネットワークを介(かい)して共同利用を可能にする
クラウドコンピューティングを地方自治体に普及させるために、
自治体クラウドという言葉を使って開発実証事業を推進してきました。
この自治体クラウドを導入して得られる効果としては、
①複数の自治体で情報システムを共同管理することによる
コスト削減効果
②自治体の庁舎被災による情報消失を防いで迅速(じんそく)に業務を
再開する効果
の2つが挙(あ)げられます。
総務省では、東日本大震災の発生以降、上で挙げた②の効果に期待して、
とくに被災地を対象に自治体クラウドの導入を後押ししています。
(下にリンクした、「自治体クラウドポータルサイト」からは、導入イメージや、
意見交換会・有識者懇談会の議事録などを閲覧できます。)
総務省ホームページより、「自治体クラウドポータルサイト」↓
(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/lg-cloud/index.html )
東日本大震災では、岩手県陸前高田(りくぜんたかた)市など4市町の庁舎が津波に襲われ、住民情報を保管していたサーバーが被災したことで、住民票発行などの業務に支障をきたしました。
総務省は、(被災した)4市町が自治体クラウドを導入していれば仮庁舎などで業務をすみやかに再開できたと判断し、被災した市町村が導入する場合は実質的に国が導入費用を全額負担すると発表しました。
この発表を受けて、津波でサーバーが被害を受けた岩手県大槌町(おおつちちょう)は新年度からの導入を予定しています。
ほかにも、地震の揺れで本庁舎などが使用不能になりサーバーを移転した
福島県須賀川(すかがわ)市など、導入を検討している自治体が増えてきています。
さらに、被災地以外でも、導入を検討している自治体があります。
たとえば、愛知県豊橋市、岡崎市の両市は、震災前には住民情報を相互に
保管しあうことを検討していましたが、震災後にクラウド導入を決めました。
しかし、導入予定・導入検討中の自治体は、まだまだ少ないのが現状です。
総務省の発表によると、2011年末現在で、自治体クラウドを中心とした情報の共同管理システムを導入している市町村は、予定段階を含めて、
全国1719市町村のうち約1割の177市町村となっています。
現在は東日本大震災からの復興が第一だとは思いますが、
筆者個人の意見としては、被災した市町村以外の自治体にも国が導入費用を負担して、自治体クラウドの導入率を上げれば、
地震をはじめとする災害に襲われて庁舎のシステムに被害が出た場合でも各種証明書の手続きがスムーズにおこなわれ、結果として住民も国もムダな手間がはぶけると思います。
なお、総務省の説明によると、自治体クラウドの通信網は一般のインターネットと違い自治体だけを結んでいるため、外部からのハッキングやデータを盗まれることはないそうです。
(参考:「朝日新聞」2012年2月12日朝刊、サイト「BCN BizLine」2011年9月15日)
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