【雑記/読書感想文】才能の科学 | 働くカットマンのチラ裏卓球ブログ

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 皆様いかがお過ごしでしょうか

 

 僕は流行りの最先端から2年少々遅れくらいで、ようやく流行に便乗してみることになりました😇

 

 妖精さんです、と聞いた時は既に平熱になっていたので、

 

 「次の日ぐらいから自宅でマシン練し放題やん🤗」

 

 などと思っていましたが、その後再び39度まで達し、その後も微熱が続き、全身の倦怠感やなんやで自宅練ができるような体調にはまだ戻りそうにありません😇

 

 自宅では菌扱いされてますがウィルスです😇

 

 復帰は再来週になり、いくつか練習や試合をキャンセルしました😇

 

 

 復帰までに自宅練を重ねて待機期間中になぜか強くなる方向で考えていますが、今はただただ静養しております😇

 

 

 復帰後の日曜は羽曳野レイティングに久々に出るつもりです。久々で下書きメールのつもりが朝4時半にフライングで申込メールをしてしまい、即ごめんなさいしましたが、6時半に「お手数ですがもう一度9時にメールを送ってください」と運営Uさんからメールが届き、何かホンマに申し訳ないことをしたと思った次第です😇

 

 

 

 さて、久々に読書感想文です。

 この本は2010年に原書が出版され12年経った今、和訳されて出版された本でございます。

 (12年前にも既に和訳されて出版されていたようですが読んで無かったです)

 

 著者はマシュー・サイドという元卓球選手でイギリスのオリンピック代表として2回出場、カットマン、さらにオックスフォード大学哲学政治経済学部を首席で卒業、という僕の超超超超完全上位互換です。

 

 もはや上位互換という語句を使って著者と僕を比較表現するのも憚られるような御方です😇

 

 

 さて、この本の内容は痛烈で、かつ痛快でございます。

 

 本書は3部構成で、

  1. 才能という幻想
  2. パフォーマンスの心理学
  3. 能力にまつわる考察
 となっており、全10章から成り立っております。
 
 もう第1部のタイトルからキレッキレです。
 
 
【才能という幻想】
 第1部を超乱暴に要約すると
  • 遺伝子だとか才能だとか全部言い訳。練習の質と量が上達するかどうかを決める
  • ボールを打つことを練習だと勘違いするな
  • フィードバックの即時性が重要
 などなど、非常に刺さって耳が痛すぎることばかり書かれています。
 
 
 僕も概ねこの考え方には本読む前から賛成だったんですが、
 
 一方で いやいや、言うて才能関係あるやろ
 
 と少なからず思う方で、本書で繰り返し書かれていることを噛みしめながら自分自身の体験を振り返ってみると、
 
 たまたま良いフィードバックを即時に受けられる環境に恵まれていて、
 たまたま、自分の努力とは別のところで目的性訓練を受けられる環境が整っていて、
 その上で、たまたま自分の努力や意識の方向性も合致していた
 
 という分野では、非常に短期間である程度行くとこまで行ったと思います(本書でいう「傑出」とするには程遠いですが)、
 
 その一方、卓球においては、圧倒的に多くの時間を割いたはずなのに、結果が伴っていない。
 
 それはそういった環境に恵まれていなかったこともありますし、運要素が大きく寄与し過ぎた成功体験しかなかったため、何をすれば上達するのかの再現性ある道筋が見えておらず、 「努力」ですとか「練習」の定義を捉え違えていた期間が非常に長かったですし、まず「努力」しようとするベクトルに対するメンタルブロックも強固にありましたし、さらに言うと内心「この練習よりもっとすぐ強くなれる練習ができるよな…」と気付いているのにやらなかったこともたくさんあります。
 
 
 と、いうのは本書を読む前にも内省から気付いてはいたのですが😇!、
 
 本書では数々の事例やデータを基に、これでもかというほどにロジックを固めていて、言い訳してるだけで何もせん奴は絶対に逃がしてやらんという鉄の意志を感じます😇
 
 
 
 結局は やるかやらんか であり、本書は
 
 弱いのはお前の努力不足
 グダグダ言ってんと練習しろ
 
 と突き付けられ、言い訳の余地を最初から完全に塞がれてしまっている気がしますが、一応逃げ道は用意されていて、それは既に触れましたが「環境」が多大に影響するという点です。
  • 目的性訓練を積んで努力しようとする当人の明確な意思
  • 質の高い訓練を積めるだけの環境、リソース
  • 即時性の高いフィードバック
 これだけの条件を揃えることが、本書で言う「傑出」するために必要なことなのですが、これを幼少期に自力で整えられる人間なぞ誰一人いないので、運要素もめちゃくちゃ大きく絡むんだけどね、というお話です。
 
 
 もちろん運要素でかいよね、環境大事だよね、で終わるんではなくて、本書の考え方をベースに自分自身の行動選択ですとか意識を自問自答するキッカケとして非常に良著だとおもいますし、
 
 何ならこれ、育児書としてもめちゃくちゃえぇ話が書いてあります。
 
 元々の邦訳されていた本の改題前のタイトルは
 「非才!―あなたの子どもを勝者にする成功の科学」
 というものだったようで、納得です。
 
 
 第1部でもっとも刺さった一節を引用すると、
 
「すぐれたスケート選手たちはつねに現在の能力をこえるジャンプを試みるが、ほかのスケート選手たちはそれをやらない。」
 
 です。
 
 
 卓球に置き換えると現在の能力を超えない、無意識に打てるドライブを無目的に連続で打ち続けて楽しんでるとか、
 
 フットワークが弱いと嘆いてるだけで、そもそも速く動作するための練習をしてないだとか、
 
 様々な自分の妥協ポイントを急角度でエグり散らかしてきます😇
 
 
 
【パフォーマンスの心理学】
 第2部もかなり乱暴な要約をすると、パフォーマンスを向上させるためには、ある種アホになる必要があると。
 
 ザ・ジャンプ漫画の主人公のように、どんな時もブレない一本筋の通った強固なヒーロー像が世間一般の理想ですが、パフォーマンスを向上させる上では、むしろダブルスタンダードでも良く、都合の良い時に都合の良い思想信条に身を委ねて、強烈なプラシーボ効果を得ることで、心理的にも強くなれるんや
 
 的なことが書いてあります。
 
 
 これは僕のようにA●Fの根拠論文まで調べて、これ身に着けて優位性が出るってぐらいの結果がまだまだ何も出とらんやんけ😇などと御託を並べたがる層からすると激震が走るんですけれど、でも確かにプラシーボ効果って大事やなと思うところではあります。
(ちなみに、そんな僕でもAX●の5000円のヒモは卓球中に着けてることが普通になり過ぎて、外すと違和感があるのでプラシーボ効果のために自宅練習中ですら着けてます😇が、切れて使えなくなったらなったで気にしなくなるのでしょう😇)
 
 
 とりあえず「傑出」するためには努力が大事、というところで全人類の99.9%がつまづいているので、この第2部で謳われる、プラシーボ効果を得るための取り組み云々を競技力向上のために役立てられる層がどれほどいるのかは定かではありませんが、
 
 広く一般的に知られる、緊張で「あがる」という現象が如何にして引き起こされるのか、という部分の解説は、ハェーーー😇!となりました。
 
 第1部でも触れられているのですが、複雑な動作を伴う競技となればなるほど、言語化などという悠長なことはしていられず、無意識レベルで動けないといけない訳ですが、無意識レベルで動く時と、意識下で動く時とでは、脳の使っている回路が違うらしく、
 
 緊張して動作がぎこちなくなってしまう場面というのは、この思考回路の切替が起きてしまって、いつもなら無意識レベルに落とし込んで身についている動きが、意識しないとできなくなってしまうことによって引き起こされる…というものだそうで。
 
 
 第1部と第2部で、卓球という競技特性上、あらゆる動作の言語化は組合せ爆発が起きるから現実的に不可能であるとかそんな話も散りばめられていて、このブログやり始めたの2014年なんですけど、そのさらに前から2000円程度出せば色んな答えが用意されていて読めたんですなぁ…と思うと複雑な思いがございます😇
 
 
 
【能力にまつわる考察】
 第3章は読みものとしてもまた面白く興味深いです。
 
 ドーピング問題から医学の倫理的問題に切り込んでいくところでは、直接の題材とはなっていませんが、卓球界における補助剤問題に対する著者の一つの答え(立場)が示されています。
 
 要は「ルールで定めたところで検知しようがないならイーブンになるよう認めてしまえ」という立場ですね。
 
 そういう立場なんすか😇⁉と最初は意外やったんですが、まぁ読んで納得でした。
 
 
 また、僕らがめちゃくちゃ強烈に抱いているような、常識とすら信じられている、
 
 「黒人は肉体が強靭」「長距離や短距離で有利」だとかも、実は遺伝子を調べてみても、統計的に優位な発見はされておらず、ある特殊な一部地域で育った人間だけが特異に強い(しかもその一部地域の人口群の遺伝子は多様で、特殊因子が見いだせない)ことから、傑出するための能力的な寄与度としては、生育環境因子や本人の意識の方が、遺伝子よりずっと高いのではないか…といった話が列挙されています。
 
 むしろ僕らが抱くような「黒人は~」「白人は~」といったステレオタイプが、本人達にとって有利に働いたり、メンタルブロックとなって不利に働いたりしているケースまである、と。
 
 第3部は特に色んな考察がされ得る余地がございました。
 
 
【訳者解説が秀逸】
 実は本書はあとがきの後に記載されている、訳者さんの解説がまた秀逸で、圧倒的大多数の弱い人間(そんな頑張られへんで…😇)である読者側が抱きそうな疑問や声を代弁したり、原書が出版されてから10余年経過した間に生まれた議論の変遷をかいつまんで説明してくれていたり、その上で本書の内容を補筆してくれていたり…と、超良いまとめを書いてくれています。
 (訳者もまた一般人からすれば傑出するために必要な努力を重ねてきた人、ではあるのですが)
 
 
 本書は今読んだから刺さったのかも知れませんが、総じて大変な名著でございました。