ジムに行こうと車を出して最初の角にあるS家の玄関先に、国旗が掲げられているのが目に入った。
そういえば、そういえば……
今まで気にもとめなかったが、このS家、祝日には必ず国旗を掲げるのだ。それも、手旗みたいな小さな旗ではない。応援団の団長じゃない人が両手でつかんで振るくらいのそこそこ大きな旗だ。
S家は今、70代後半の夫婦が住んでいる。子供たちは巣立ち、両親もなくなり、今に至る。
御主人も奥さんもしごく普通な常識人。左右どちらかに大きく寄っている人には到底思えない。
でも、祝日のたびに旗を出す。もう何十年も、それを律儀に守っている。
今どき、一般家庭でこうした旗掲揚は見たことがない。
今日が終わったら、旗は片付けなければならない。時には洗わなければならないだろう。
私など、それを考えただけで面倒くさい。
いったい何のために出すのだろう。
誰かに見せるためか。自分が納得するためか。御主人が出しているのか奥さんが出しているのか。2人とも思いは一致しているのだろうか。
どうでもいいことだが、いまさら気になって仕方がなくなった。
日の丸の 白地にシミなど 捨て置けぬ
鞠子