右上の一番奥の歯の詰め物が取れた。
1週間ほど前から、取れそうなことは認識していた。10月に次の予約を入れているのだが、それまで持つかどうか微妙。
…どころの話ではなかった。昼食中、あっさり脱落。
まあ、痛みはないので困りはしないのだが、10月までほっておくのはよろしくないだろう。残っている自歯が尖っているし、何よりその自歯が欠けてしまっては困る。
…ので、すぐにかかりつけの歯科に電話した。受付スタッフ、「ちょっと数日立て込んでいて」と言った後、しばらく電話を保留、保留の音楽が切れると同時に「明日の12時はどうでしょう」と言ってきた。
何たるラッキー。よろしくお願いします、と即答した。
そんなこんなで歯科へ。
診察室には、治療中の男性患者が一人、待合室には女性が一人いたが、ほどなくその人は呼ばれて中へ入っていった。
しかし、12時半になっても、2人とも出てこない。当然、急な予約だから待たされることは承知しているが、男性患者のほうが野太い声で先生に何か言っているのが気になって仕方がない。
おそらくクレームチックなことを言っているのだが、内容は分からない。
そうこうしているうちに、後から入った女性患者が出てき、ようやく私が呼ばれた。
衛生士が口内の消毒薬を持ってきた。こいつでブクブクうがいをする。
…とそのとき、隣で治療中の男性が、激しく咳き込みだしたのだ。
一瞬、先生がミスって、治療器具がのどの「嘔吐ポイント」に触ったのではないかと疑ったが、先生の声は全く聞こえない。
その男性、咳くわ、咳くわ。途中、吐きそうになるほど咳いている。私は見たことも聞いたこともないほどのひどい咳で、いったい何が起こっているのか気が気でない。
コロナ感染増…ニンバス…カミソリを飲み込んだようなのどの痛み…
治療台に寝かされたままの私の頭の中に、嫌な言葉が巡り出す。
相対している先生は、どんなにひやひやしているだろうか。
いや、ちょっと待て。先生たちは、医療用のマスクで完全防備している。私の担当医など、その上にゴーグルをつけシールドまでつけている。衛生士たちも、当然皆マスクをしている。つまり、その診療室でノーマスなのは、咳いている男性と私だけなのだ。
若干、咳が収まった男性患者は、「喘息だ」と言っていたが、喘息ってあんな咳じゃない気がする。
なんでよりにもよって、このタイミングでこの患者と同室に?
昨日、詰め物が取れたのも、今日、予約が取れたのも、あまりにもタイミングが悪すぎるではないか。
もう本当に、逃げ出したかった。よりにもよってこの日・この時間に歯科に来たことを、心底呪った。
ヒヤヒヤしながらも、取り合えず詰め物をまた装着してもらったのだが、医師は「ちょうど1年くらい前にも取れましたよねえ。一度取れるとどうしても取れやすくなりますから、次回、またすぐ取れるようだったら全部かぶせたほうがよさそうですね」とお言いになった。
いや、この歯の詰め物が取れたのは初めてのはず。そう言ったら医師曰く「いえ、データが残っていますから」。
もちろん、そこで頑張ったりはしなかったが、この歯の詰め物が取れたのは初めてだ。取れた記憶がない。
先生が間違っている···
家に帰ってこのブログを遡ってみた。
2024年6月5日、確かに右上の奥、詰め物が取れた旨、記していた。人生初めてデンチャーを作ったときであり、テーマはそれこそ「ふんだりけったり」。
1年経ち「ふんだりけったり」に「よりにもよって」が加算された。
ボロボロと 歯の一端から 欠けていく
鞠子