先週、大雪が降った日のこと。
前日から、「明日は降りそうだ」情報満載だったので、上司が「明日はとにかく気をつけて出勤するように」なるお触れが出されていた。
おまけに「雪が降ろうと降らまいと、私は私用で遅刻します」なる追伸もついていたが。
で、朝、起きて見たら、ゆうに20センチは積もっていた。
一瞬、出勤するの、やめよかな、と思った。
とりあえず、急ぎの仕事は昨日までに片付けてきたし、何より私は「嘱託の身分」なのだ。休んでも構わない。無理して行って事故でも起こしたら、むしろ迷惑だ。
迷っているうちに、最若手オトコ後輩からラインが入ってきた。「バスも電車も動きません」と書いてある。
彼はまだ若葉マーク掲載車、なのに、自宅から職場まで一番遠い。私の家からと比べたら、ゆうに3倍はある。
それでも、彼の立場からしたら、相当焦っているだろうな。若いころ、私もそうだったもん。
かたや今の私は、休もうかな、などと思っている。
いかん、曲がりなりにも給料をもらっているんだから、ゆるゆるとでも行くしかない、か。
それに、若かりし頃なら、堂々と休めることができた日など、ラッキー極まりないと思ったが、今となっては嬉しくもなんともない。
ということで、普通通りに家を出たが、当然大渋滞。
渋滞の中には、バスもトラックもいる。沿道のチェーン店は「モーニングサービス中」の看板に回転灯が回っている。当然、コンビニも普通に営業している。
渋滞の車の中で、考えた。
雪が降ろうと雨が降ろうと、「働いている人(働かなくてはならない人)は働いている(働かなくてはならない)」のだ。この人たちが働かないと、世の中は回っていかないのだ。
そして、定年まで勤めあげた私は、取り急ぎ、働いても働かなくてもいい。私が働かなくとも、世の中は普通に回っているのだ。
そして、もう「出勤しようか、しまいか」なんて迷う必要はないのだ。結局、どっちだっていいわけだし、そういう意味では、もう自分を解放したってかまわない。で、それより、そんなことを迷っている時間がもったいない。
残り時間は、そうそうないのだ。
一向に降りやまない雪を見ながら、なんとも複雑な気分だった。
職場についたのは、定時より20分、遅れていた。
解放も 束縛もまた 胸乱れ
鞠子