歯科へ定期検診に行った。
マイナ保険証を読み取り機器に挿入する。
顔認証か暗証番号入力かを聞いてくるので、顔認証を選ぶ。
マスクを外して、機器の画面の真ん中に来るよう、顔をセットする。
ギョッとした。
ウソでも誇張でもない。
本当にギョッとした。
画面に写ったその人は、まぎれもなく「私の母」だった。
母が生き返ったのかと錯覚するほど、顔も姿勢も瓜二つだった。
この前、すごく久しぶりに会った姪が、私を見るなり「ママ(←彼女にしてみれば祖母)にそっくり!ママかと思った」と驚愕していた。
私自身も、いつごろからか、母に似てきたことは意識していた。
だが、今日の歯科で見たときほど「瓜二つ」だとまでは思ったことがなかった。
幼いころ、私は全くの父親似だったのに。
父とは中学生のときから離れ離れになり、母と2人の暮らしが圧倒的に長い。
もし、圧倒的に長く暮らしたのが母じゃなくて父だったら、今の私は父に似たままだったのではないかと思う。
「犬は飼い主に似る」というのと同じ原理。
それにしても……
あまりにも、私は「母」だった。
すごすぎるほど、「母」そのものだった。
首筋の ラインもあの日の 母だった
鞠子