ピアノのコンサートに行った。
気鋭の若手ピアニスト。
一度、鍵盤の上でどのように指が動くのか見てみたいと思い、奏者の真上のバルコニー席に座ってみた。
何度も来たことがある地元のクラシックホール。
参加している合唱団の演奏会も毎回ここだし、一度だけ1人で歌ったこともあるしで、ステージも控え室も知っている。
それなのに、こんな経験は初めて。
どこからか、ピシッ、ピシッっと結構大きなきしみ音が聞こえてくるのである。
音的には、ガンガンに凍らせたペットボトルを取り出して置きっぱにしたとき、ときどき聞こえてくるようなあの音。
最初、たくさんあるスポットライトのどれかが「落ちるんじゃないか」とギョッとした。
以後、頻繁に聞こえてくる。
耳が、ピアノの音よりきしみ音ばかり拾ってしまう。
何の音なんや、これ。
いつもなのか、今日たまたまだったのかは分からないが、とりあえず全然集中できなかった。
奏者が背中からしか見えないこともあって、目すらもスポットライトばかり追ってしまった。
ほんと、何の音なん?
チケット代、損した気分。
異な音に 誰も気づかぬ 夏の午後
鞠子