町費を集金に来た今年度の班長に、とうとう前から考えていたことを口にしてしまった。
「できれば自治体を退会したい。それは可能でしょうか」と。
前からずっと、自治会のことが気になっていた。
入っている意味が分からない。これへの加入は強制なのか。
入っていれば、必ず役員が回って来る。
自治会長、副自治会長、会計、班長、体育委員、防火クラブ委員、青少年育成委員etc.etc.
班長は、班内を順番に、その他の役職は、「〇年は〇班から自治会長を出す」みたく、全て明確に計画されている。
つまり、運が悪いと、うちの班から自治会長を出さなければならない年まわりに役員が当たる可能性がある。
しかし、どう考えてみても、私の今の状況で役員はやれない。
高齢化が進み、空き家が増え、住民が減ったため、私の入っていた班は解体され、2年ほど前に別班に吸収された。だから、今年度の班長ももともとは別班だった人であり、よく知らない人。退会するなら、申し訳ないが今しかない。役員が回ってきてから「やめます」では、もっと迷惑をかけてしまう。
新班長は困惑顔で、「私の一存では返事ができない。自治会長に聞いてみる」と帰っていった。
そして数日後、自治会長がやってきた。
自治会長も言うには「私もできれば(役員を)やりたくない。だから、退会したいという気持ちはすごくよく分かる」。ただ、「こうして退会する人が出てくると、連鎖して次々やめる人が出てきて、ますます人数が減ってしまう」と。
たしかにおっしゃるとおり。
そうして人数が減ったらどうなるか。
本来、自治会は災害が起こったときに力を発揮するのだろうと思う。
隣に誰が、何人住んでいるのか分からないという状況はまずい。
水とか食料とか、自治会の倉庫に備蓄しており、役員が、定期的に入替えしていることもよく知っている。
だから、「なくていい」とは思わない。全員、自治会を退会したら、自治会はなくなってしまう。
それでも退会するという私が、とても身勝手なのだ。
だけど、役員はできないのも事実であり、それを引き受けるに当たっては、自分の大切にしている何かをあきらめなければならないことは目に見えている。
だが、自治会長は、私の意向を受け入れて帰っていった。
正直、胸が痛む。
ちなみに、この自治会長も、初めて会った全然知らない人だった。
一人では 生きられぬでも 一人居る
鞠子