ゲンキーで買い物し、レジに並んでいたときのこと。
次は私の番、というところで、友人同士らしい若い男の子2人が私の後ろに並んだ。
「まずいな、遅刻や」というのが聞こえたので、ちらっと振り返ったら、2人とも背中にギターをしょっていた。
きっと、バンドの練習に行くんだ。そう思った。
彼らはそれぞれ、ペットボトル1本と菓子パン1個を手にしているだけ。
焦っている様子が見て取れたので、私は彼らにレジの順番をゆずった。
彼らは「いいです。大丈夫です」と固辞したが。カートに様々積んでいる私のレジは時間がかかる。彼らも私のカートを見て、余計に焦りが増していただろう。だから私は強引に彼らの後ろに下がった。
しきりに恐縮しつつも、彼らは私より先にレジを済ませ、ちゃんと頭を下げて出ていった。
私もレジをすませ、外に出たら、彼ら2人、立ったままパンをほおばっていた。
出てきた私を見て、2人は再び「ありがとうございました」と言った。
「ちょっといい話」なのは、私の善行(?)ではない。
ギターをしょった彼らが、本当に楽しそうで生き生きしていたことだ。
私も学生時代、バンドを組んでいたので、その楽しさ、その大変さはよく分かる。
だが、今となってみれば、学校では学べないことを、バンド活動を通じて学んだ。
いや、別に、バンド活動に限ったことじゃない。
若者が若者らしく、若者同士、生き生きできる何か。
それは、トー横でしゃがんでいたり、ネットゲームの沼にはまっていたりするのとは質が違う、と思うのは、間違っているだろうか。
あわてて食べている姿すら、楽し気に見えた。
嬉しくなってしまったオバサンは、「楽しんできてね」と余計なお世話を一言付け加えた。
その時間 二度と戻らぬ 今一瞬
鞠子