誘われて、ゴルフに行った。
私はゴルフをやらない。若いころ、数回、打ちっ放しに行ったことがあるくらいで、全くやれない。
それでもついて行ったのは、「営業目的」だ。
どこかで知り合った男性に誘われた。
どこで知り合ったのかは定かでない。ただ、「この人は、経営者に違いない」と見て取った。だから、誘いにホイホイ乗ったらしい。
カウンターみたいなところで、その男性が何か記入している間、私は後ろに立っていた。
すると、母と知り合いの女性が現れ、「資料を持ってきたよ」とささやいた。
そうそう、うちの仕事を説明したパンフレットがいる。
私は母にパンフレットの入った茶封筒をもらい、男性が記入を終えるのを待っていた。
そうこうするうちに、男性の携帯がなり、記入一時中断。
しばし話した後、彼は私に向かい「もう一人、来るからね」と言った。
よし! その人も、きっと経営者に違いない! 今日、いっぺんに2人、客が増える!
私は、母にもう一部資料を持ってくるように命令した。
母と知り合いの女性は、ゴルフ場を出ていった。
私はワクワクしながら、カウンターで何か書いている男性の背中を見ていた。
…なんてさ、もう本当にイヤだよ。
嘱託になってすら、仕事の夢を見る。
確かに私の職場は、客様はほとんど「経営者」なのだ。だから、葬儀に参列すれば、花輪に記されている社名をチェックしまくるし、広告が載っている冊子なんかは、片っ端から一つずつ見る。客様になってくれそうな社長はいないか、どうしても確認してしまう。
銀行で、プールで、経営者を見つけて声をかけたことも、一度や二度じゃない。
夢の中では、死んだ母まで登場させた。
もう、いい加減に引退したらどうだ、私。
その笑顔 グレーのセーター 夢の人
鞠子