ATM前でのオジサンとのやり取りで、己の単純さをつくづく笑った後、行内へ。

待ち合いスペースで本を読んでいた。

 

もう相当長い間持ち歩いているショーペンハウアーの『読書について』。

警句、箴言続出なのだが、全然ページが進まない。

哀しいかな、右から左へ流れてしまうのが、情けなくてたまらない。

 

…などと考えつつ&読みつつ、ふと思った。

世の中、白と黒の2つに分けられることなんて、ほぼ、ない。

例えば、殺人事件が起きたとき、犯人は黒と言い切れるか。

確かに、人を殺したという1点では黒だが、そこに至る諸事情を考えたら、灰色のところも白色のところもあるはずだ。

逆に、奉仕活動にいそしむ人はどうか。

被災地でボランティア活動をする。その1点では白だが、その人の心中に例えば売名という思いがあったらどうか。やっぱり灰色のところも黒色のところもある。

 

白と黒には分けられない ―― 私はこれは、ずっと前から確信していた。

だが、今日、新たに思ったのは、そこにプラスして、「世の中、単純なことは何もない」という諦め。

白と黒に分けるその以前に、世の中、単純に片づけられること、決着すること、解決することなど何もないのだ。

 

ついさっき、ATMでオジサンに「長いこと、すみませんでした。お先に」と言われ、怒りやいらだちが氷解した自分を単純だと思ったが、深読みすれば、後ろで私がいらいらしていることに気づいたオジサンが、心にもない一言を言っただけかもしれず、実は「うっとうしいオバサンが並んでる。ウザい」と思っていたかもしれない。

そもそも、1冊分の通帳付け足しをしてはいけないという規則はどこにもないんだし。

たとえ何人、後ろに並んでいたとしても。

 

そんなことで、『読書について』はまたもや前へ進まなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

半世紀 過ぎても迷う 今日明日

鞠子

 

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