今、NHKの朝ドラ『らんまん』で主人公の槙野万太郎。
植物学者の牧野富太郎氏がモデルになっている。
牧野富太郎博士、といえば、私がその「名前」を知ったのは、大学に入ったときだった。
というか、それまで、全く知らない人だった。
その上、大学に入り、名前は知ったものの、どういう人なのか全然わからなかった。ただ「名前」だけを知ったのである。
同学部同学科のなかで、一人だけ、すごく目立たない、だからかえって目立つⅯさんという女性がいた。
いつも穏やかな笑顔を浮かべて、ひっそりとたたずんでいる、いわゆる「大人の女性」に見えた。
物腰も穏やかで、口数も少なくて、いるのかいないのかわからない人。
だが、これまでの私の友だちのなかにはいなかった、不思議なオーラを放っていた。と同時に、私にはないもの、望んでも決して得られないものを備えている人に思えてならなかった。
彼女は1年だったか2年だったか浪人しており、実際、年上であることを後で知った。
そのMさんが、自己紹介書類か何かに「尊敬する人:牧野富太郎さん」と書いていた。
誰なんや、牧野富太郎さんって······
やっぱりこの人は、私とは違う世界で生きてきた人なのだと思い知った。
なぜかそれは強烈な印象で、また強烈なショックだった。
当時、インターネットなどなく牧野富太郎さんが誰なのか、簡単に調べることはできなかった。
図書館で調べるなんて、「遊ぶために大学に入った私」には思いもつかなかった。
放送前、『らんまん』のPRを見て、Mさんの優しい顔を思い出した。
なつかしい。
今、どうしているのか、会ってもお互いわからないだろうな。
陽だまりの バイカオウレン かの女〈ひと〉も
鞠子